インド理科大学院(IISc)のK. ガナパシー・アヤッパ(K. Ganapathy Ayappa)氏の研究チームは、計算モデルを使って、抗菌ペプチドと黄色ブドウ球菌や大腸菌の細胞壁との間の相互作用をシミュレーションした。科学誌 nature india が2月28日に報告した。研究成果は2報の論文として学術誌 The Journal of Membrane BiologyとBiointerphases に掲載された。
今回開発された計算モデルは、抗菌ペプチドと細菌の細胞壁との間の相互作用について、新たな知見をもたらすものだ。この計算モデルは、抗菌ペプチドをスクリーニングすることで、薬剤耐性菌に有効なペプチドを特定できると期待される。
細菌は細胞壁の種類により2つのグループに大別される。1つはリポ多糖の外膜を持つグループ、もう1つは外膜を欠いたペプチドグリカンを持つグループである。
これまでの研究から抗菌ペプチドは、細菌の細胞膜を構成する脂質二重層の内膜と相互作用を図っていることが知られている。しかしながら、抗菌ペプチドが脂質二重層の外膜をどのように通過しているかは分かっていない。
研究チームは計算モデルを使って、CM15やメリチンなどのペプチドと黄色ブドウ球菌や大腸菌の細胞壁との相互作用をシミュレーションし、細菌の外膜がCM15に対して障壁になっていることを明らかにした。論文の著者であるプラディウム・シャルマ(Pradyumn Sharma)氏やラケッシュ・ヴァイワラ(Rakesh Vaiwala)氏らは、細菌の外膜にあるリポ多糖分子の抹消部分にCM15の単一分子が結合することを明らかにした。研究者らは、CM15の集合体が細菌の外膜と内膜を破壊し、内部に浸透しているのではないかと考えている。
一方、抗菌ペプチドのメリチンは正の電荷を持ち、負の電荷を持つ大腸菌の細胞壁と強く結合していることが明らかになった。メリチンは、黄色ブドウ球菌より大腸菌の細胞壁で奥深くまで浸透していた。ペプチドと細菌の間の相互作用の違いを捉えることができ、研究で使用した計算モデルの有用性を示した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部