インド理科大学院(IISc)の生態科学センター(CES)の研究者らが、ブッシュコオロギの無線追跡調査を行い、天敵による捕食リスクに雌雄差があり、メスのブッシュコオロギの方がオスより高い捕食リスクにさらされていることを発見した。4月6日付け発表。研究成果は学術誌Behavioral Ecology and Sociobiologyに掲載された。
ロヒニ・バラクリシュナン(Rohini Balakrishnan)教授を中心とする研究グループは、これまでにヒメオオコウモリがメスのブッシュコオロギを好んで捕食することを突き止め、その理由について研究を行ってきた。メスのコオロギの大きさや栄養価の高さと捕食との関係について調査をしてきたが、いずれも関係がないことが分かっていた。
そこで本研究では、ブッシュコオロギの行動力に雌雄差がある可能性について仮説を立て、無線タグを用いた追跡調査を行った。その結果、メスはオスの1.5倍の頻度で、1.8倍の距離を移動する傾向があることが分かった。このことから、メスはオスよりも頻繁に飛び、木々の間をより長く移動するため、天敵からの捕食リスクが高いのではないかと結論づけた。
CESのポスドクで論文の著者であるハリシュ・プラカシュ(Harish Prakash)氏は、「本研究はインドで初めての昆虫無線追跡研究です」と説明する。また、CESの博士課程学生で論文の共著者のカストゥリ・サハ(Kasturi Saha)氏は、「こうした頻繁な長距離飛行の理由としてメスは交尾相手や適切な産卵場所を求めて移動しているのかもしれません。捕食者と被食者の相互作用については、まだ多くの未解決の問題があり、例えば、コウモリは繁殖期でない時期に、より多くのメスのブッシュコオロギを狩るようです。これも私たちが解明しようとしている謎です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部