2023年05月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2023年05月

地磁気嵐の回復期に地磁気真珠振動の増加を発見―宇宙飛行士に対する放射線の危険の理解に寄与 インド

インド科学技術庁(DST)傘下の研究機関であるインド地磁気研究所(Indian Institute of Geomagnetism: IIG)(※)は、国内外の研究機関と連携して、太陽周期20~21および太陽周期24の下降期に関連する、それらの脈動の長期変動性をインドの極低緯度地域から調査した結果を発表した。5月1日付け。

同調査は、地磁気嵐の回復段階で地磁気Pc1真珠脈動と呼ばれる真珠タイプの構造を持つ特別な連続振動が地球の表面で大幅に増加することを追跡調査したものだ。この研究は、地磁気嵐の粒子の降り込み(Precipitation of Particles)を調査する上で重要であり、衛星や宇宙飛行士に対する放射線の危険を理解するのに役立つことが期待される。

地磁気Pc1パール振動は、振幅変調され構造化された狭帯域信号であり、地球の磁気圏における共鳴波と粒子の相互作用によって生成された低周波EMIC波の特徴である。これらの振動の観測は、地球の磁気圏における粒子降り込みの測定としても利用される。

地球の磁場は我々の周りに保護シールドを形成しており、この磁場空洞内でさまざまなプラズマ波が生成される。しかし、地磁気嵐はしばしばこの保護シールドにへこみを引き起こすことがある。そのような磁気嵐の間には、エネルギー粒子は加速されるか、あるいは地球の放射線帯から失われる。それは、Pc1脈動と呼ばれる磁場振動(0.1~5Hz)として現れ、"電磁イオンサイクロトロン(Electromagnetic Ion-Cyclotron: EMIC)の不安定性"と呼ばれる低周波の波の成長につながるプラズマ環境の変化要因となっている。

これらの脈動(Pulsations)の証拠は、中緯度および高緯度地域には豊富に存在しているが、緯度が低い観測所では、それほど頻繁には存在しない。これらの波は、地球に近い環境における宇宙天気(太陽フレア、太陽プロトン現象、磁気嵐等の状況)の測定での重要な要素である。

この研究は、赤道サイトのChoutuppal(CPL、L =1.03)からの太陽周期20~21をカバーする13年間の保存記録と、5年間のデジタル誘導コイル磁力計データを使用し、低緯度サイトDesalpar(DSP、L =1.07)からの太陽周期24の下降期をカバーし、Pc1波の構造を調査したもので、静かな地磁気状態と活動的な地磁気状態の間の形態学的変化を調査し、高緯度のEMIC波について低緯度にもたらす際の電離層の役割をモデル化したというものだ。

その結果、昼に比べて夜のPc1数の明らかな増加が観察された。これは、Pc1波が電離圏導波管を経由して低緯度に向かって伝搬する際の減衰が夜間に弱くなるためである。同様に、太陽活動極大期には、太陽極小期よりもPc1波の赤道への透過率が減少した。Pc1発生の年次および季節パターンは、両方の観測点で、黒点数と反比例の関係を示した。また、これらの脈動と活発な地磁気条件との関連は、地磁気嵐の回復段階でPc1の発生が大幅に増加することを示ししていた。

この研究によって提供される衛星と宇宙飛行士への放射線障害の理解は、衛星ベースの通信システムに大きく依存する現代において有効と言える。同研究結果は、Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physicsに掲載された。

(※)Indian Institute of Geomagnetism(IIG):https://www.iigm.res.in/

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る