インド理科大学院(IISc)は4月17日、IIScと米国のテネシー大学による研究チームが、インドのアンドラプラデシュ州ヴェンパレで発見された古代のドロマイト(苦灰石)を分析し、古原生代と呼ばれる約20億年前の地球に存在した可能性の高い、浅い内海の温度と組成を推定したことを発表した。研究成果は学術誌Chemical Geologyに掲載された。
古代の地球は二酸化炭素(CO2)濃度が、生物にとって毒になる濃度であったなど極端な気候を経ている。しかし、古生代の化石の研究からそのような過酷な環境下でも生命が存在していた可能性があることが分かってきている。
IIScとテネシー大学による研究チームは微生物と海水の相互作用によって形成された硬い岩石であるチャートと、その下にあるドロマイト石灰泥と呼ばれる堆積物からドロマイトのサンプルを採取し、「炭酸凝集同位体温度計」という最新の技術で分析を行った。
この技術では、炭素と酸素の結合の配置を調べることで、堆積物の温度と組成を知ることができる。分析の結果、研究チームはサンプルのドロマイトが形成された約20億年前の海水の温度が約20℃であったことを明らかにした。先行研究では、同時代の海水温は約50℃前後と見積もられていたため、対照的な結果となった。また、当時の水は、重水素や重酸素によりできる重水のみであると考えられていたが、水素と酸素によりできる軽水も存在していたことも示した。
IISc地球科学センターのプロセンジット・ゴッシュ(Prosenjit Ghosh)教授は「古原生代の低い海水温と軽水の存在という発見は、当時の環境が光合成を行う藻類が出現し、繁栄するためにいかに適切であったかを示すものです。古代の岩石には地球の過去に関する豊富なデータが隠されていることが明らかになりました」と研究の意義を説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部