2023年06月
トップ  > インド科学技術ニュース> 2023年06月

マルチレベル機能を備えた光電子データストレージ用フォトニックメモリ開発 インド

インド科学技術庁(DST)傘下のナノ・ソフトマター科学センター(Centre for Nano and Soft Matter Sciences: CeNS)は、酸化スズ傾斜ナノロッドアレイ(Tin Oxide Slanted Nanorod Arrays)に基づいた機能メモリを開発したことを発表した。5月12日付け。

酸化スズナノ構造は、視射角蒸着(Glancing Angle Deposition: GLAD)技術と呼ばれる電子ビーム蒸着によって作られた。この新しいフォトニック機能メモリは、光学的刺激と電気的刺激の両方を使用してスイッチング特性を変調することができ、高密度かつ高効率のコンピューティングシステムを開発する可能性を示している。電子ビーム蒸着は、集束電子ビームを目的のターゲット材料に照射して蒸発させ、最終的にターゲット材料を基板上に蒸着させる物理蒸着法。GLADは、基板の座標(傾斜と回転)を操作することにより、複雑なナノ構造の作製を容易にするものだ。

近年の目覚ましいビッグデータ時代において、従来のシリコンベースのフラッシュメモリを上回る不揮発性、超高速、信頼性の高い機能的なメモリシステムが設計されているが、既存のメモリ技術の物理的限界を克服できる新たなデータストレージデバイスの開発が必要となっている。そのようなデバイスのひとつが、一般にメモリスタ(Memristor: Memory+Resistor)として知られ、電気信号を通じてデータを保存および処理できるもの。また、この抵抗性メモリ(高抵抗状態と低抵抗状態の間で内部抵抗を変化させる非線形受動2端子電気部品)では、光と電気刺激の両方を使用して、マルチレベルでのセル動作を含むスイッチング特性を変調できるのが特徴である。

この研究では、メモリデバイスの良好なスイッチング特性が観察されたが、このような特性には、低い動作電圧、適度なオン/オフ比、つまり、メモリデバイスのオン状態(低抵抗状態:LRS)とオフ状態(高抵抗状態:HRS)の電流の比や、より長い耐久性や、暗闇でのセルフコンプライアンス効果による保持力の向上が含まれている。さらには、紫外(254及び365nm)から可視光(405及び533nm)の範囲の照明下で、107を超える拡大されたON/OFF比に加えて、より速い応答時間を伴う通常ではない負の光応答が観察された。

負の光応答は、光照射時のデバイスの活性層内の電流の減少によって特徴付けられる。これらのデバイスを電気的にSET(電圧バイアスを加えることで、デバイスを高抵抗状態から低抵抗状態に切り替えること)し、LRSに光学的にRESET(光にさらしたときにデバイスを低抵抗状態から高抵抗状態に切り替えること)してHRSにできることを発見したという。

注目すべき点は、プログラミング電流と光刺激を変調することで、複数の低抵抗状態と高抵抗状態が達成されていることである。さらに、電場誘起の酸素欠損の形成と光誘起の溶解が、光刺激による抵抗スイッチングの原因であることを示唆する十分な実験証拠も発見されたもので、酸化スズナノロッドアレイの局所的な導電性は、電気的手段と光学的手段との間の相乗的な相互作用によって変更され得るということだ。

この研究は、ACS Applied Materials and Interfacesに掲載された。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

上へ戻る