データセキュリティ、防衛戦略、通信、銀行、エネルギー、環境、医療に革命を起こそうとするインドの野心的な構想である国家量子ミッション(NQM)に関して、20年以上にわたり量子科学技術に携わってきたインドのラマン研究所のウルバシ・シンハ(Urbasi Sinha)教授が見解を発表した。科学誌nature indiaが5月9日に報告した。
NQMは量子コンピューティング、安全な量子通信、量子センシング、量子材料・デバイスに焦点を当てている。スイスの官民パートナーシップ財団であるジュネーブ・サイエンスディプロマシー財団(GESDA)のオープン・クォンタム・インスティテュート(OQI)イニシアチブ諮問委員を務めるウルバシ氏は、量子コンピューター技術を悪用し、公開鍵暗号の解読など、データの安全性を脅かす悪用について懸念している。
「量子コンピューターがデータセキュリティに致命的な脅威を与えるのであれば、私たちは、量子力学の法則を利用したデータの鍵の受け渡しを行う量子鍵配送(QKD)で対抗することを目指します」とウルバシ氏は述べる。通信におけるセキュリティは、銀行や防衛などの分野だけでなく、政府間通信、オンライン商取引や機密性の高い個人識別情報においても、第一に重要なものだ。
「量子コンピューティングと安全な量子通信は、NQMの研究対象として非常に重要な分野です。私たちの目標は、より多くの量子ビットを搭載した量子コンピューターの実現で、5年で50~100量子ビット、8年以内にさまざまなプラットフォームで1000量子ビット以上まで拡大することを目指しています。また、量子セキュリティに関してはQKDネットワークを延長し、データを安全に転送できる距離を伸ばすことに焦点を当てます」とウルバシ氏は指摘する。
NQMでは焦点を当てている4つのテーマについて主要な研究開発機関や学術機関にハブを設置する予定だ。「これらの分野において、卓越性と実績のある研究所に主要な資源を割り当て、タイムリーな支援を提供することで、キャリアの浅い研究者を育成する必要があります。また、組織のキャパシティ・ビルディングを重視し、新規の研究開発にも取り組むことで、ミッションが終了する頃には、インドがニッチな分野でリードすることができるようになるでしょう」とウルバシ氏は語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部