インド科学技術庁(DST)は、傘下のインド天体物理学研究所(Indian Institute of Astrophysics: IIA)が、地上に設置された太陽望遠鏡の画像画質を定量化するために「二乗平均平方根粒状コントラスト」(Root Mean Square Granulation Contrast)と呼ばれる新しい基準を提案したことを発表した。5月20日付け。
同研究所では、大気によってもたらされる気流の乱れを説明するための理論を使って、大気の乱気流がない場合(理想的ケース)の画像がどのように見えるかのシミュレーションを実施し、大気(気流の乱れ)が存在する場合の画像(摂動画像)と、その光学補償(Adaptive Optics: AO)補正が行われたケースでの画像と比較した。この提案された新たな指標は、地上の望遠鏡から撮影された太陽の画質を定量化するのに役立つという。
太陽表面で発生するフレアやプロミネンス、コロナ質量放出などの動的現象により、太陽は天文学者の関心の的となっている。また、太陽は地球から最も近い恒星であるため詳細な研究が可能で、太陽を理解することで他の星の特性を推定することが可能となる。微細な特徴をさらに詳細に解明するために、大型望遠鏡が建設されるが、IIAにより2mクラスの国家大型太陽望遠鏡(National Large Solar Telescope : NLST)(※1)の建設が、インド北部ジャム―・カシミール地区にあるメラク(Merak)で計画されている。
しかし、地上の望遠鏡には大きな欠点がある。太陽からの光は均質な媒体ではない地球の大気を通過し、ランダムな温度変動が起きることから屈折率の変動につながることである。これにより、光がランダムに曲がり、それが強度 (瞬き/きらめき)及び検出器上の画像の位置の変化として現れる。これを解決するひとつ方法は、AOシステムを使用して大気によってもたらされる歪みをリアルタイムで測定し補正することである。
AOシステムの性能を定量化し、地上の望遠鏡からの画像の品質を定量的に評価するにはどうすればよいのか。地上の望遠鏡から得られる画像の品質は、夜間天体望遠鏡に直接使用されるストレール比(※2)やその他の指標では定量化が困難である。そこで、研究者は、インドや世界中で、既存しているか、または計画中の太陽望遠鏡の口径 (D)を対象に、入力パラメーターのさまざまな組み合わせに対する粒状のストレール比とコントラストを決定したものだ。
スレール比はシミュレーションでは容易に求めることができるが、実際のシステムでは簡単に求めることができない。そこで同研究では、理想的なシミュレーションの結果を実際のシステムと比較して計算し、ストレール比の効率は約40~55%、コントラストの下限は約50%という測定基準を導き出したという。この結果は、太陽望遠鏡および関連するAOシステムの性能を特徴付けるために有効であるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部