インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者らは、インド国民の医療費負担におけるハードシップファイナンスに焦点を当てた研究を行った結果、医療費が家計に大きな負担を与えていることを明らかにした。5月18日付け発表。研究成果は学術誌BMC Public Healthに掲載された。
インドにおいて、国民の医療は大きな関心ごとの1つだ。2018~2019年の保健医療支出推計によると、医療費の総額は5兆9640億ルピーと見積もられている。この中で、私費負担は53.32%を占める。政府がこれらの支出を抑制するために複数の制度で対策をとっているが、依然として医療費は国民の家計に大きな負担となっている。
IIT-M人文社会科学部のアーリア・レイチェル・トーマス(Arya Rachel Thomas)氏とサントシュ・クマール・サフ(Santosh Kumar Sahu)教授、そしてインドのインスティテュート・オブ・ルーラル・マネジメント・アナンドのウマカント・ダッシュ(Umakant Dash)教授は、入院患者と外来患者のハードシップファイナンスに焦点を当てた研究を行った。
ハードシップファイナンスとは、医療費を賄うために家族が非公式にお金を借りたり、資産を売ったりする手段を指し、家庭の経済的安定性に大きな負担をかけるものだ。研究にはインド全国標本調査(NSS)の健康に関する社会的消費についてのデータを用い、地域、疾患、入院または外来で分類し、性別、教育状況、所得水準、民間・公的医療サービス、年齢層、婚姻状況などの要素も考慮した。
研究の結果、インドにおいては入院患者よりも外来患者においてハードシップファイナンスが増加していることが明らかになった。その主な理由の1つは、外来患者の多くは公立病院で治療を受けているにも関わらず、私立の薬局で医薬品を購入していることにあった。さらに、研究ではがん患者は入院、外来問わず最も高いハードシップファイナンスを受けていることが分かった。本研究の著者らは、政策の波及効果と治療の費用対効果を高めることによって医療を増強する必要があると結論づけている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部