インド理科大学院(IISc)は6月8日、研究者らがホルモンの一種であり糖尿病の早期発見につながると考えられるソマトスタチンの濃度を検出する手法を開発したことを発表した。研究成果は学術誌International Journal of Molecular Sciencesに掲載された。
糖尿病患者の血糖値を下げるために、インスリンの投与を行うことが主流となっている。しかし、最近の研究で、膵臓から分泌されるソマトスタチンなどの別のホルモン濃度の変動が糖尿病の発症に関与している可能性が示されている。このホルモンは、デルタ細胞と呼ばれる膵臓の特定の細胞から分泌され、インスリンとグルカゴンを制御するマスターレギュレーターである。
IIScの発生生物学・遺伝学部門(DBG)のニヒル・ガンダシー(Nikhil Gandasi)助教授は、スウェーデンのヨーテボリ大学の共同研究者とともにソマトスタチンの分泌量を検出できる新しいアッセイを開発にした。この方法は酵素結合免疫吸着法(ELISA法)のように、抗体を塗布したプレートを用いて試料中の抗原の存在を確認するものだ。この方法を用いて、マウスとヒトから抽出した膵臓細胞中のソマトスタチン濃度の検出に成功し、ヒトの健康な組織と糖尿病のドナー組織の両方で、ソマトスタチンを産生するデルタ細胞の数を測定することもできた。その結果、糖尿病患者では、デルタ細胞の数が激減していることが明らかになった。「糖尿病患者にはデルタ細胞の数が少ないので、ソマトスタチンの分泌も少ないのです」と、筆頭著者のIIScの客員科学者でありヨーテボリ大学の上級科学者のラクシュミ・コテガラ(Lakshmi Kothegala)は言う。
現在、ソマトスタチン濃度を検出するためには放射性物質を用いたラジオイムノアッセイ(RIA)を行う必要があるが、ELISAが完全に機能するようになれば、より実用的な検査方法になる。また、今回開発されたキットは、RIAに必要な血漿サンプルの量の10分の1程度である。研究者らは現在、産業界の協力者とともに、このキットをシンプルな携帯型機器として開発し、最終的には大量生産できるよう取り組んでいる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部