インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者らは、アプリケーションの要件に応じて異なるモデルを実装できる柔軟なネットワークスイッチを開発した。5月30日付け発表。
インダストリー4.0により、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ロボティクスなどの新技術が普及し、大量のデータが扱われるようになってきている。特にIoTは、環境モニタリングやヘルスケアなどの領域で普及しているが、IoTデバイスでは大量のデータを扱うことが難しいということが課題となっている。
典型的なIoTシステムのアーキテクチャでは、データはアグリゲーションデバイスやゲートウェイ、シンクノードなどの他の中間ノードに転送された後、中央管理モニタリングおよびコントロールエンティティに転送される。IoTデバイスが生成する大量のデータを処理するためのソリューションとして、INC(In-Network Computing)の利用がある。INCは、送信データ量を削減し、IoT機器のエネルギーを統合することができる。
また、観測されたデータをもとにAI/MLモデルを生成し、新たに生成されたデータに対してモデルを適用することで、システムの目的を達成する。IoT機器からのデータパケットを転送する方法として、ネットワークスイッチを介する方法があるが、IoT機器の処理能力の限界から、このような計算には適していない。そこで、アプリケーションの要件に応じて異なるモデルを実装できる柔軟なネットワークスイッチが求められる。
IIT-Mコンピュータ科学工学科のガネッシュ・C・サンカラン(Ganesh C. Sankaran)博士(現在は米国の情報科学研究所に所属)らは、ネットワークスイッチのハードウェアとしてプログラマブル・データプレーン(PDP)を、ソフトウェアとしてプログラミングプロトコル非依存のパケットプロセッサ(P4)プログラミング言語を使用することで、データプレーンスイッチが、データを転送だけでなく、パケットを処理して何らかのアクションを起こすことに成功した。本研究では、PDPとP4の概念を用いて、AIベースの産業用IoTシステムのINCを実現できることを示している。この研究では、INCのもう1つの課題であるセキュリティに関しても着目し、安全性のある実行モデルが提案されている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部