2023年07月
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アルツハイマー病の初期段階に関連する酵素を検出―蛍光プローブ開発 インド

インド理科大学院(IISc)は6月14日、研究者らがアルツハイマー病の進行に関係する酵素を感知できる低分子蛍光プローブを設計・開発していることを発表した。研究成果は学術誌Analytical Chemistryに掲載された。

アルツハイマー病は60歳以上の多くの人々に記憶喪失をもたらし、認知能力を低下させる神経変性疾患だ。現在、病気の兆候の検出にはMRI(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放出断層撮影)、CTが使われるが、複雑で高価であり、必ずしも決定的な結果をもたらさないという課題があった。

IIScの無機・物理化学科(IPC)のデバシ・ダス(Debasis Das)助教授らの研究グループは、アルツハイマー病の初期段階で量がアンバランスになることが知られているアセチルコリンエステラーゼ(AChE)と反応し、蛍光を発する蛍光プローブを開発した。AchEは脳細胞や神経細胞が分泌する神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)を酢酸とコリンに分解する酵素だ。研究チームはAChEとAChの結晶構造を解析し、AChを模倣したプローブを設計した。このプローブはAChEと特異的に相互作用する第4級アンモニウムとAChEの活性部位に結合し、反応することにより蛍光シグナルを発する構造要素を持っている。プローブを市販のAChEとバクテリアに発現させ精製したヒト脳AChEを用いてテストし、蛍光を発することも確認した。

ダス氏は「私たちの目標はこのプローブをアルツハイマー病モデルで実用化することです。現在のところプローブにはUV活性があり、高用量では組織に害を及ぼす可能性があり、改良する必要があります。改良により近赤外活性プローブを開発できればより安全で深部組織のイメージングが可能になります。私たちはすでにこの実現にかなり近づいているのです」と今後の研究開発について語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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