2023年07月
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量子状態の再構成へ、より良いニューラルネットワークを研究 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は6月22日、IIT-M電気工学科の研究者らが量子コンピューターにおいて重要な量子状態再構成を行う新しい機械学習アプローチであるLQST(Learned Quantum State Tomography)の研究を行っていることを発表した。

量子物理学の原理に基づいて動作する量子コンピューターは、古典的なコンピューターでは不可能に近い計算を実行できる可能性があることから、研究者や産業界から大きな注目を集めている。古典的なコンピューターではデータの最小単位となる1ビットにおいて情報は0状態か1状態のどちらかで扱われているのに対して、量子コンピューターでは1ビット(量子ビット)において0状態と1状態の重ね合わせの状態で存在できることにある。この特徴により、量子コンピューターでは量子ビットの0状態と1状態を同時に操作することが可能となる。

しかし、量子コンピューターの計算能力を利用するためには量子ビットの状態を読み取る必要があるが、読み取ろうとすることでこの0状態と1状態の重ね合わせが破壊され、2つの計算状態のうち1つしか得られないことになる。この崩壊は確率的に行われるため、量子ビットの実際の重ね合わせ状態を推定することが可能だ。この推定に使用される最も一般的な方法の1つが特異値閾値(SVT)アルゴリズムだ。

IIT-M電気工学科のシヴァ・シャンガム(Siva Shanmugam)氏とシータル・カリヤーニ(Sheetal Kalyani)教授はSVTの反復をアンロールすることによって、量子ビット系の量子状態を推定する機械学習アプローチの研究を行い、その方法をLQSTと名付けた。LQSTはSVTと比較して量子ビットの真の状態と推定された状態の間の忠実度の点で優れていることが分かった。また、計算量においてもLQSTはSVTよりはるかに少ない。さらに、既存のモデルでは完全な測定値セットから特定の量子状態の測定確率のみを学習するが、LQSTでは不完全な測定値セットから、一般的な量子状態の密度行列を直接再構成することが可能だ。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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