インドのコルカタにあるインド医学研究評議会(ICMR)国立コレラ腸疾患研究所(NICED)の研究者らの3年間にわたるサーベイランス調査により、小児および成人においてこれまで報告されていなかったアメーバ病原体Entamoeba moshkovskiiの存在が明らかになった。科学誌nature indiaが6月24日に報告した。研究成果は学術誌PLOS GENETICSに掲載された。
腸を侵す病気であるアメーバ症を引き起こす病原体Entamoeba moshkovskiiは1941年にロシアのモスクワで初めて報告されて以来、多くの国々でも検出されている。インドではこの病原体に関するデータが不足しているため、研究者らは病原体の有病率を調べるために、コルカタにある2つの病院から6,000以上の臨床サンプルを集め、顕微鏡および分子学的手法を用いてスクリーニングを行った。その結果、サンプルの3.12%がE. moshkovskiiに感染していることを発見した。
この病原体の抵抗性で感染しやすい形態であるシストの数は、他のEntamoeba種よりも少なかった。189の陽性サンプルのうち、病原体の運動性形態である栄養虫の存在を示したのはわずか9%であった。病原体への感染率は5歳から12歳の小児で最も高く、19歳から29歳の成人で最も低かった。この病原体の有病率はEntamoeba histolyticaよりも高く、秋から夏にかけての季節にピークを示した。
研究者らは、特定の遺伝子のDNA塩基のわずかな変化が病原体を強め、腸内環境への適応を可能にした可能性があるとしている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部