インド工科大学マドラス校(IIT-M)は6月20日、研究者らが天気の数値予報の全体的な精度を高めることを目的とした統合的なアプローチを開発したことを発表した。
正確な天気予報は災害の回避にもつながることから非常に重要であり、全世界で研究が進んでいる。本研究は、IIT-M機械工学科のサンディープ・チンタ(Sandeep Chinta)博士とチャクラヴァルティ・バラジ(Chakravarthy Balaji)教授、および国立中期気象予報センターのV. S. プラサド(V. S. Prasad)博士によって行われ、既存の2つのデータ同化手法を組み合わせた新しいハイブリット手法を開発したことで、予測の改善につながった。
天気の数値予報では、地球や大気を細かい格子状に分割し、各地点の現在の気象要素や温度などの初期条件を割り当て「今」の状態を再現し、そこからさまざまな計算を行い「将来」の状態を予測している。そのため精度を向上させるには、大気の物理を正確に表現できること、そして気象モデルに与える初期条件の精度が高いことが重要である。
世界各地の観測点から得られた観測値だけでは数や要素的に不十分なため、観測値に過去のデータを組み合わせた推定値を求める必要があり、その方法がデータ同化と呼ばれる。データ同化はこれまで、変分法やアンサンブル予測が用いられており、研究に関してもこれらのうちどちらかを改善することに焦点が当たったものが多かった。しかし、本研究ではこれらをかけ合わせ、パラメータ校正された気象研究・予報モデルに対するハイブリッド・データ同化を行った。2018~2020年の12事象がシミュレーションされ、その結果、校正されたパラメータを用いたデータ同化は、同化を行わないデフォルトのパラメータと比較して、降雨量(18.04%)、表面気温(7.91%)、表面気圧(5.90%)、10メートルの風速(27.65%)と各項目の誤差を低減できることがわかった。
インド科学研究所のディベチャ気候変動センターの特別科学者であるJ.スリニバサン(J. Srinivasan)教授は、「この結果は有望です。サイクロンが陸上を移動するときに発生する豪雨に対処するためにもこの研究を進めることが重要です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部