2023年08月
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抗生物質耐性菌に毒性をもつ合成ペプチドを開発 インド

インド理科大学院(IISc) は7月20日、研究者らが抗生物質耐性菌に毒性をもつ短い合成ペプチドを設計したことを発表した。研究成果は学術誌EMBO Reportsに掲載された。

抗生物質の過剰使用から、抗生物質耐性菌が増加し、科学者たちは代替の戦略や分子を探索している。今回開発された約24個のアミノ酸からなるペプチドは、DNAの立体構造を維持する役割をもつトポイソメラーゼという酵素を阻害する天然毒素CcdBの作用を模倣している。CcdBタンパク質の全長は大きく、そのまま薬として使うことは不可能であったが、今回開発されたペプチドは短いため、薬としての活用が期待される。

今回、研究チームは、微生物・細胞生物学科(MCB)と共同で、大腸菌、サルモネラ・チフスムリウム、黄色ブドウ球菌などの多剤耐性株の増殖に対する新しいペプチドの効果を、細胞培養と動物モデルの両方でテストした。また、トポイソメラーゼを標的とする最も広く使用されている抗生物質であるシプロフロキサシンと開発したペプチドの効果の比較も行った。

その結果、このペプチドはほとんどの菌株の細胞膜を破壊し、動物モデルでは、感染を劇的に減少させることが分かった。さらに、ほとんどの症例で、ペプチド投与後の主要臓器の細菌数の減少は、シプロフロキサシン投与群よりも高いことが分かった。例えば、抗生物質耐性のアシネタバクター・バウマンニに感染した動物では、シプロフロキサシンでは3分の1までしか減少しなかったのに対し、ペプチド処理では肝臓の細菌量が18分の1に減少した。また、このペプチドは比較的安全で、動物に毒性反応を起こさなかった。

加えて、このペプチドはシプロフロキサシンとは細菌の酵素上の異なる部位に結合するため、研究者たちは、既存の抗生物質との併用療法に使える薬剤を同定する手がかりになると考えている。分子生物物理学ユニット(MBU)の教授で、共著者の1人であるラガヴァン・バラダラジャン(Raghavan Varadarajan) 氏は、「この研究は、新しい抗生物質を見つける有効なアプローチとして、トポイソメラーゼを標的にすることの重要性を補強するものです」と話した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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