インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者らがプラスチックによる環境汚染の根本的な原因となる家庭での活動や製品からのマイクロプラスチックの発生についてまとめた総説を発表した。7月25日付け。総説は学術誌Environmental Science and Pollution Researchに掲載された。
年間488万トンから1,270万トンのプラスチックが海洋に流入していると推定され、2050年までに海洋プラスチックの総重量は、魚の総重量を上回るとも言われている。早急な対策が必要となっている。
総説をまとめたのは、IIT-M土木工学部環境・水資源工学科のエンジェル・ジェシーリーナ(Angel Jessieleena)氏らだ。総説中では、家庭に関連するマイクロプラスチックの発生源についてよく知られているものからあまり有名でないものまで紹介し、それらが運ばれ、変質し、毒性を持つに至るまでについて解説した。
マイクロプラスチックはプラスチック汚染の主な原因で、環境内で分解されずに残ってしまうもののことを指す。食器洗い、洗濯、入浴、トイレの使用といった一般的な家庭活動によって、マイクロプラスチックは発生し、都市廃水として流出する。食器洗いのプラスチック製スポンジ、洗濯で発生するマイクロファイバー、入浴や衛生活動で使われる、シャワージェル、洗顔料、歯磨き粉に含まれる合成ポリマー製マイクロビーズなどが発生源だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで大量に作られたフェイスマスクなども発生源の1つとなる。
廃水中に流出したマイクロプラスチックはサイズが小さいため、自治体の処理で除去されず環境中に放出される。放出されたマイクロプラスチックは他の汚染物質を吸着する傾向があり、有害な化合物がマイクロプラスチックから溶出することでさらなる汚染にもつながることが報告されている。
著者らはマイクロプラスチック汚染を防ぐために、生分解性素材への置き換えや、プラスチックベース製品の使用を減らす必要があると提言した。ドイツのアーヘン工科大学のヤン・シュヴァルツバウアー(Jan Schwarzbauer)教授は「この総説では、読者が科学分野の専門家でなくても、日常生活で排出されるマイクロプラスチックについて、包括的な見解を得ることができます」と評価した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部