インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、IIT-Mとドイツの国際的な研究チームが、複雑ネットワークという学際的方法論に基づく新しいデータ駆動型アプローチを用いて、サイクロンの相互作用を分析し、その合体について予測したことを発表した。8月25日付け。研究成果は、学術誌Chaos: An Interdisciplinary Journal of Nonlinear Scienceに掲載された。
長年にわたり、サイクロンはインド亜大陸だけでなく、南アジア全域、オーストラリア、アメリカ大陸の熱帯地域などの海岸線を襲ってきた。このようなサイクロンによる人命や財産の甚大な被害と破壊は、主に農業を基盤とする熱帯諸国の経済に深刻な脅威をもたらしている。
今日でも、このような極端な気象現象の形成と伝播の背後にあるメカニズムや、近隣の気象システムとの相互作用については、十分な理解が得られておらず、世界中の気象学者の間で活発な研究と議論が行われている。中でも、同じ半球にある2つの熱帯低気圧が互いに接近したとき起こる相互作用(藤原効果)が注目されている。この相互作用は、気象予測モデルに完全に組み込まれているわけではないため、誤った予測につながり、生命や財産に対する脅威を増大させる。
そこで、IIT-M、インド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)、ドイツのポツダム気候影響研究所(PIK)の研究者チームは、複雑ネットワークという手法を用いて、藤原効果の分析を行った。この手法は、複雑系の相互作用のパターンを符号化するもので、分析の結果、2つのサイクロンにおける相互作用の異なる段階を明確に区別し、サイクロン合体の早期兆候について理解することができた。
本研究の主執筆者であるソムナート・デ(Somnath De)博士は、「新しい手法を用いて、サイクロンの軌道の突然の変化や再強化が起こるような非常にまれな事象をケースバイケースで分析し、サイクロンの軌道予測の改善を行うことができました」と語る。IIT-Hのヴィシュヌ・R・ウニ(Vishnu R. Unni)博士は、「データ駆動型の異常気象予測手法には、従来の手法ではとらえどころのない、異常気象の進化における重要なパターンを特定できるというユニークな利点がある」と付け加えた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部