インド工科大学マドラス校(IIT-M)の記憶研究センターは9月21日、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)の技術を同時に利用したMovingMemoryアプリを発表した。
MovingMemoryはモバイルアプリ(AndroidとiOS)、またはブラウザベースのプラットフォームからアクセスできる空間アプリで、メタバース世界に入り込む可能性を加味して開発されたものだ。アプリの機能では、ユーザーが好きなアバターを選択し、3次元空間を移動することが可能となる。ビデオ、オーディオ、3D画像、インタラクティブ要素などの追加要素が組み込まれており、持続可能で継承を前提とした教育学的・研究的アプローチのモデルとして使用することができる。
アプリの発表は、9月20日から22日までIIT-Mで開催された国際会議「Memory, Ecology, and Sustainability」の中で行われた。文化的記憶と持続可能な開発目標にふさわしい人間中心のさまざまな技術や政策をインドだけでなく世界規模で検討することを目的とした会議で、インド国内をはじめ、米国、英国、ドイツ、ニュージーランド、モロッコ、カナダ、スウェーデン、バングラデシュなどから約100名の発表者と500名以上の参加者が集まった。
IIT-MのディレクターであるV.カマコティ(V. Kamakoti)教授は開会の挨拶で、「気候変動などの問題に関連する政策を理解し、実行するためには集合的記憶を取り入れることが重要です。スペイン風邪や2015年のチェンナイ大洪水など、人間だけでなく非人間的な記憶のあり方も、学際的かつ共同的な形式で研究することで、学問としての記憶研究を進めることができるでしょう」と述べた。
在チェンナイ米国総領事館アメリカンセンターのディレクターであるシーマ・マソット(Seema Massot)氏は、「IIT-M記憶研究センターとアメリカンセンターとの間で、水の保全、気候変動、環境に優しい生活といった問題へのさまざまな協力の可能性を、デジタルインタラクティブモデルや没入型モデルを通じて探ることは重要です」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部