インド理科大学院(IISc)は、傘下のナノ科学工学センター(CeNSE) の研究者らが、電気自動車(EV)やノートパソコンの電力変換器、無線通信などのシステムに応用可能な、窒化ガリウム(GaN)パワー半導体を初めて完全国産で開発したことを発表した。9月27日付。研究成果は、学術誌Microelectronic Engineeringに掲載された。
GaNパワー半導体から作られるGaNトランジスタは、その高い性能と効率から、従来のシリコンベースのトランジスタに取って代わり、EVなどの超高速充電器や、レーダーなどの宇宙・軍事用途など、多くの電子機器の構成要素として使用されつつある。
この研究を率いたCeNSEの准教授ディグビジョイ・ナス(Digbijoy Nath) 氏は、「材料とデバイスは輸入規制が厳しく、インドではまだ商業規模のGaNウェーハ生産能力がない中で、今回の研究では非常に有望で破壊的な技術を確立しました」と話した。
この半導体は、電子機器の電源のオン・オフを制御するために使用される。装置を設計するために、研究チームは、CeNSEのスリニヴァサン・ラガヴァン(Srinivasan Raghavan) 教授らが10年以上かけて開発した有機金属化学気相成長法を用いた。これは、2インチのシリコン・ウェハー上にGaN合金結晶を1層ずつ成長させ、多層トランジスタを作製するものである。湿度や温度などの環境条件がデバイスの性能に影響を与えるため、プロセス全体をクリーンルームで慎重に実施する必要がある。
GaNトランジスタは通常、空乏モードと呼ばれる動作をする。つまり、負の電圧を印加してオフにしない限り、常にオン状態である。しかし、充電器やアダプターに使用されるパワー半導体は、その逆の動作が必要だ。この動作を実現するため、研究チームはGaNトランジスタと市販のシリコン・トランジスタを組み合わせ、通常はオフの状態を保つようにした。
デバイスのパッケージングも独自に開発され、テストの結果、このデバイスの性能は、市販されている最先端の半導体に匹敵するもので、オンとオフの切り替え時間は約50ナノ秒であることがわかった。研究チームは今後、大電流で動作するようにデバイスの寸法を拡大する予定である。また、電圧を昇圧または降圧できる電力コンバーターの設計も計画している。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部