インド工科大学ビライ校(IIT-Bhilai)の研究チームは、血糖値の上昇に応じて持続的にインスリンを放出し、健康な膵臓細胞によるインスリン分泌を模倣することができるハイドロゲルを開発したことを発表した。科学誌nature indiaが10月3日に報告した。研究成果は、ACS Publicationsに掲載された。
注射などの既存のインスリン投与法は、血糖値の危険な低下を引き起こす場合がある。スチェタン・パル(Suchetan Pal)氏が率いる研究チームはより安全なインスリン投与法を見つけるためにハイドロゲルの合成を行った。
研究チームは有機化合物を用いてキトサンナノ粒子をポリビニルアルコールで架橋することによってハイドロゲルを合成した。合成したハイドロゲルは、血糖値の上昇に応じて持続的にインスリンを放出し、健康な膵臓細胞によるインスリン分泌を模倣できることが分かった。特にCPHG3と呼ばれるハイドロゲルの1つが最も強力な薬物キャリアで、酸性状態でほぼ97%のインスリンの放出が確認できた。
このハイドロゲルには毒性がなく、マイクロニードルを介して投与したり、錠剤のように服用したりすることも可能だ。糖尿病ラットによる実験では、血糖値を異常な低血糖を起こすことなく低下させることに成功した。また、このハイドロゲルは壊れることなく伸縮し、2つに割った場合も再び結合する自己修復特性を持つことが示唆された。
今回開発したハイドロゲルは、インスリン療法を必要とする糖尿病患者の利便性と安全性を高める可能性があるという。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部