インド宇宙研究機関(ISRO)は量子コンピュータの能力が高まっている中、ハッカーに侵入されないシステム構築の実現が期待される超安全な量子通信機能を備えた衛星の打ち上げを目指している。科学誌nature indiaが10月16日に伝えた。
量子コンピュータの進化により、従来の暗号化手法は簡単に解読される可能性が世界的に高まっている。そんな中、期待されているのが量子鍵配送(QKD)だ。QKDは量子力学の原理を利用し、メッセージや音声、映像、テキストを暗号化する鍵を生成・配布する。光子の量子状態を利用して2者間で共有した鍵は、原理的にハッキングによって完全なコピーを作ることができないため安全な通信を可能にする。
ISROが打ち上げを計画している衛星はQKDまたは量子暗号に基づくもので、情報を処理する量子コンピュータを一体的に接続する通信ネットワークの構築に貢献する予定だ。衛星の打ち上げ日についてはまだ発表されていない。
インドでは、2021年にISROとアーメダバードの物理研究所(PRL)が、アーメダバードの宇宙応用センター内にある2つの建物間で、量子鍵で暗号化された信号を使ったライブビデオ会議により、300メートル離れた自由空間での量子通信の実証に成功している。この成功は衛星ベースのQKDの先駆けとなるものである。さらにPRLは2022年に、量子エンタングルメントに基づくリアルタイムQKDを300メートルの大気圏内チャネルで行い、量子セキュアテキスト、画像伝送、量子アシスト双方向ビデオ通話にも実現している。
QKDを標準として開発するには10年程度かかる可能性があるが、インドはこの技術への投資を決定した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部