インド工科大学マドラス校(IIT-M)が、頸動脈の蛇行と動脈瘤の発生・成長との関係について明らかにした。10月31日付発表。研究成果は学術誌Physics of Fluidsに掲載された。
動脈の膨張や膨らみは動脈瘤として知られており、時間の経過とともに大きくなり、破裂して生命を脅かす可能性がある。したがって、患者におけるこれらの動脈瘤の破裂リスクを推定することは重要である。
今回の、インドのスリーチトラティルナル医療科学技術研究所(SCTIMST)とIIT-M応用力学・生体医工学科との共同研究では、頸動脈の蛇行の影響と動脈瘤の発生と成長との関係が調査された。
脳には主に内頸動脈(ICA)から血液が供給されている。椎骨動脈と一緒になって脳底動脈を形成し、ウィリス動脈輪につながり、脳への側副血行も促進される。しかし、これらの血管の脳動脈瘤は分岐部や分岐点に好んで形成される。
ICAのさまざまな患者特異的モデルについて、蛇行(解剖学的構造の曲がりやねじれの側面)が血行動態(血流の動態)や疾患の進行に及ぼす影響を研究するため、C字型、S字型、U字型、ヘリカルサイフォン形状の4つの患者特異的なICAサイフォン形状が選ばれ、比較評価された。その結果、サイフォンの局所的および全体的な屈曲度と回転数が、流れのパターン、圧力損失、ヘリシティなどに大きく影響することがわかった。著者らは、ICAの曲がり角数が少なく、C字型やS字型のような鋭角に曲がった形状は動脈瘤を形成しやすいという仮説を立てた。一方、U字型やヘリカルサイフォン型は屈曲度が高く、曲がり角の数も多いため、動脈瘤がさらに成長する可能性は低いと示唆した。
IIT-M校のパラサド・パットナイック(Prasad Patnaik)教授は、「より大規模な患者コホートであれば、より多くのことが明らかになるだろう」と指摘。また、流体力学と熱伝導の世界的な専門家であるインド工科大学カンプール校のガウタム・ビスワズ(Gautam Biswas)教授は、「このようなエンジニアと脳神経外科医の共同研究は、数値流体力学(CFD)による臨床判断ツールの開発に必要な第一歩である」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部