インド理科大学院(IISc)は、IISc持続可能技術センター(CST)のプニット・シン(Punit Singh)准教授が、同国チャッティースガル州で過去10年間取り組んできた灌漑施設不足問題の解決策について公表した。
インドでは灌漑施設を導入できない地域があり、大きな問題となっている。チャッティースガル州は、ガンガー、ゴダヴァリ、マハナディ流域から河川水の供給を受けているが、州南部の部族が多数を占める地域では、貯水池を利用した灌漑が行われていない。そのため、農民の多くは主にモンスーン作物の収穫に依存した生活をしている。これまでに、パイプを使った灌漑方法も検討されてきたが受け入れられなかった。
シン氏は、バスタル県タイパダル村の土壌と地形を理解するための現地調査から始め、現在では電気を必要としない持続可能な揚水システムの導入まで行っている。シン氏の行うプロジェクトでは、河川沿いのダムなどの流れを利用するタービンポンプを設置することで、電気を一切使わずに通常は15~25メートル、必要に応じて30メートルまでのさまざまな高さまで水を汲み上げ、運搬している。
IIScの科学技術革新開発財団(FSID)は2022年12月には、チャッティースガル州水資源局(WRD)と協力し、州内の水資源管理と灌漑インフラを拡大した。今後数年間は各ダムに1~2台のポンプを設置し、配管、貯水池、運河網を整備することに重点が置かれる予定だ。
シン氏は「年間25台の建設が最初の目標で、その後は400基以上あるダム全てに応用が可能」としたうえで、「この方法の最大の利点は、堤防の付近の農家が地下水を利用する必要がなくなり、水位が上昇することにあります。この技術は年間を通じて水流があるインドの広い地域で応用できます」と述べた。
(2023年12月7日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部