インド工科大学マドラス校(IIT-M)は、IIT-Mの研究者らが低侵襲性脳神経外科手術に用いるステアラブルカテーテルとフレキシブルニードルの安全な軌道について、深層強化学習(RL)アルゴリズムを使用して、自律的に生成する非ホロノミック制約付きフレキシブルニードル経路生成フレームワーク(FNPG-NH)を開発した。
脳は体の中でも非常に繊細な部位であるため、手術においてわずかなミスが起きても大きな問題を引き起こす可能性がある。脳手術には開頭手術が行われてきたが、頭蓋骨の一部を切除して脳を露出させるこの方法は、副作用が長く続くことから、低侵襲の脳手術法が検討されてきた。従来、低侵襲脳外科手術では硬い針を使って行われてきたが、脳の重要な構造を避けながら目的の病巣へアクセスするためには制限があったため、ステアブルカテーテルとフレキシブルニードルの使用が始まった。しかし、低侵襲手術におけるフレキシブルニードルの軌道設計は、生成された軌道が障害物を避けてゴールに到達するだけでなく、針の運動学的制約に従う必要があるため、困難で時間のかかる作業だった。
IIT-M工学デザイン学科のムクンド・シャー(Mukund Shah)氏とニラブクマール・パテル(Niravkumar Patel)教授は、RLアルゴリズムを使用して、低侵襲脳神経外科手術のための安全な軌道を自律的に生成するFNPG-NHを開発した。これまで、フレキシブルニードルの軌道設計には、Rapidly exploring Random Trees(RRT)などのサンプリングベースのアルゴリズムが使用されてきた。今回開発したRLアルゴリズムはこのRRTアルゴリズムに比べて短時間でより安全な軌道を設計することに成功した。
米ハーバード大学医学部放射線科講師のペドロ・モレイラ(Pedro Moreira)博士はこの研究について、「フレキシブルニードルは多くの医療処置の有効性と安全性を高める可能性がある一方で、臨床応用にはいくつかの課題があります。今回開発された方法は、ニードルの経路設計のための実用的で効果的なツールを提供し、フレキシブルニードルの自立操舵を臨床応用可能にするための大きな前進を意味しています」と評価した。
(2023年12月5日付発表)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部