2024年01月
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微小液滴をカプセル化する新技術開発 インド

インド理科大学院(IISc)の研究者らが、単結晶成長や細胞培養などさまざまな用途に使用される液滴をカプセル化する新しい技術を開発した。研究成果は学術誌Nature Communicationsに掲載された。

液滴はさまざまな分野で利用されている。IIScのナノ科学工学センター(CeNSE)のルトヴィク・ラティア(Rutvik Lathia)氏は、「マイクロリアクターにおいてさまざまな反応環境を作り出したり、異なる化学物質を混合したりすることに液滴が利用されています」と指摘。そのうえで「液滴は特定の組織や臓器に薬物やその他の薬剤を送達するためにも利用可能です。結晶化研究では、液滴を用いて結晶の成長を制御できます。細胞培養においては液滴を用いて、制御された環境で細胞を増殖させることで細胞の生存率と増殖を向上させるのに役立ちます」と液滴の利用価値について説明した。

一方で、液滴の利用には課題もある。液滴は周囲の環境からの汚染に弱く、特定のプロセスの実行と成功は、液滴が滴下される表面に大きく依存する。液滴と混ざらない液体や固体で液滴をカプセル化することは、これらの課題を回避するための有力な解決策だが、超微小なスケールにおいて、丈夫で連続性があり、厚さを調節できるシェルを作ることは困難だった。

CeNSEのプロセンジット・セン(Prosenjit Sen)准教授らはコロイド粒子や液体を注入した表面内に液滴を閉じ込める毛細管力による被覆法を開発した。この方法は、液滴を疎水性で親油性の小さなビーズで注意深くコーティングし、リキッドマーブル(LM)と呼ぶ状態にする。その後、LMをオイルが含まれた表面に置くと、毛細管力によりオイルがビーズ間にできた小さな孔に上がっていきカプセル化される。この方法では、液滴の蒸発速度が最大200分の1となり、液滴の寿命が伸びる。さらに、シェルの厚さを5µmから200µmまでの広い範囲で調節することもできる。これにより14nLから200µLまでの体積の液滴に対応することが可能だ。

セン氏は「私たちの方法は、液滴関連の応用分野に多くの新しい可能性をもたらします。シェルは固体でも液体でも調整可能であるため、さまざまなパラメーターを精密に制御することができ、化学、生物学、材料科学の分野での応用が期待されます」と述べた。

(2023年12月14日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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