2024年01月
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インターフェロンγ非反応性がん細胞を、免疫療法に反応させる方法発見 インド

インド理科大学院(IISc)の研究者らが、がんの免疫療法において重要なインターフェロンγ(IFN-γ)に非反応性のがん細胞を、免疫療法に反応させる方法を発見した。研究成果は学術誌Frontiers in Immunologyに掲載された。

がんの免疫療法は、患者の免疫系を活性化し、身体が自然に持っている腫瘍と闘う能力を向上させることで、がん細胞を破壊する方法だ。現代の免疫療法のアプローチは、T細胞と呼ばれる免疫細胞を刺激して腫瘍を標的にすることを狙う。この過程においてIFN-γとして知られるサイトカイン(小さなシグナル伝達タンパク質)の産生と機能が、腫瘍排除に不可欠である。免疫療法は化学療法や放射線療法に比べ、正常細胞への影響が少ない一方で、非常に高価だったり、効率が悪かったりすることが知られている。

IIScの研究者らは、異なるタイプのがん細胞がIFN-γに対してどのように反応するかについての研究を行った。その結果、ある種のがん細胞だけがINF-γの活性化に良く反応し、その他のがん細胞は反応しないことが分かった。がん細胞をIFN-γで処理したところ、細胞増殖培地の色が黄色に変化し、細胞が乳酸などの酸性の副産物を放出していることが明らかになった。

さらに、肝臓と腎臓に由来するがん細胞株は、IFN-γの活性化によって一酸化窒素(NO)と乳酸の酸性が増加した。これにより、有毒な活性酸素種(ROS)の酸化が促進され、酸化的損傷によって最終的にがん細胞が死滅することが分かった。しかし、結腸や皮膚由来のがん細胞株では、INF-γで処理してもNOや乳酸を産生しなかった。

研究者らは、これらの非反応性がん細胞でもNOや乳酸を発生させ、免疫療法の効果を高める方法を研究した。さまざま方法をテストした結果、乳酸カリウムを添加することで非反応性がん細胞においても細胞の増殖を劇的に減少させることを発見した。

本研究の筆頭著者であり、IISc生化学部門のディパンカル・ナンディ(Dipankar Nandi)教授は、「代謝を標的とする特定の化合物が、免疫療法中のIFN-γ活性化との相乗効果で、治療困難ながんに対する抗腫瘍反応を高めることができるかどうかを確認するために、さらに動物モデルで実験を行う必要があります」と述べた。

(2023年12月11日付発表)

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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