インド工科大学マンディ校(IIT-Mandi)の研究者らは、ネッタイシマカの卵が数カ月の休眠状態を経ても生き延び、水に浸すと孵化して幼虫となる現象について研究し、そのメカニズムの一端を明らかにした。この研究成果は学術誌PLOS BIOLOGYに掲載された。
ジカウイルスやデングウイルスを媒介するネッタイシマカの卵は乾燥に強く、休眠状態で数カ月生き延び、水に浸すと孵化して幼虫になることが野外調査で明らかになっている。しかし、乾燥した環境に長い間さらされた後、卵がどのようにして孵化を再開するのかについてはよく分かっていなかった。
IIT-Mandiの研究者らは、ネッタイシマカの卵と乾燥により卵が死滅する蚊の1種であるアノフェレス・ステフェンシの卵を、乾燥させ再び水に戻す実験を行った。その結果、ネッタイシマカの卵の85%近くが3週間の乾燥後でも水に戻されることで急速に孵化して幼虫になった。一方で、アノフェレス・ステフェンシの卵は3日間の乾燥でも孵化できなくなった。
乾燥によりストレスに強い状態となっているネッタイシマカの卵について分析を行ったところ、タンパク質レベルで通常の卵と著しく異なっていることが分かった。ストレスに強い状態の卵ではタンパク質の45種類が増加し、125種類が減少している。さらに、アルギニンやグルタミンといったアミノ酸の上昇もみられた。アルギニンはポリアミンの形成に使用され、ポリアミンの合成を阻害すると、乾燥条件下での卵の生存能力が低下することも確認された。この結果からポリアミンの活性を阻害する分子は、ネッタイシマカの個体数をコントロールすることに使用できる可能性があると研究者らは述べた。
科学誌nature indiaが2023年12月11日に報告した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部