インド工科大学バラナシ校(IIT-BHU)の研究チームが、口腔がん患者の唾液に含まれるタンパク質マーカーであるcyfra-21-1を、微量検出できるセンサーを開発した。迅速ながん診断用の使い捨てナノチップの開発につながる可能性があるという。研究成果は学術誌Sensors and Actuators B: Chemicalに掲載された。
既存のがん検出センサーは、作製が複雑で時間がかかるため、迅速な診断キットにはほど遠い。そこで持ち運び可能なセンサーを開発するため、プランジャール・チャンドラ(Pranjal Chandra)氏率いる研究チームは、金とガドリニウムヘキサシアノ鉄酸塩のナノ粒子と酸化グラフェンをスクリーン印刷した電極に蒸着させた。次にマーカーの抗体をセンサーに付着させ、臨床的に適切な濃度のマーカー(2~50ng/ml)を含む溶液にさらしたところ、マーカーの濃度が上昇し、それが抗体に結合すると、センサーの電流応答は減少した。
このセンサーは、システイン、アラニン、グリシン、血清アルブミン、グルコース、尿素、グルタミン酸、尿酸、アスコルビン酸、クエン酸など、ヒトの唾液に含まれる検出を妨げる環境下でも、cyfra-21-1を選択的に検出した。このセンサーは数分以内にマーカーを検出し、冷蔵庫で10週間保存してもその効率を維持した。
「従来のセンサーとは異なり、このセンサーは外部の電荷キャリアを必要としない。口腔がん診断用のシンプルな携帯型ポイント・オブ・ケア・デバイスに転用できるかもしれない」とチャンドラ氏は話した。
科学誌nature indiaが2023年12月19日に報告した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部