インド理科大学院(IISc)は1月5日、IIScの研究者らによる熱帯山岳地域の鳥の生態系に対する森林伐採と気候変動の影響について10年以上にわたる調査の結果を発表した。研究成果は学術誌Global Ecology and Conservationに掲載された。
熱帯山地林は世界中に存在し、標高約150~200mで始まり、標高3,500mにまで達することもあるユニークな生態系である。IIScの生態科学センター(CES)リトブロート・チャンダ(Ritobroto Chanda)氏は「熱帯山地林では、種ごとに特定のニッチがあります。この特徴が小さな領域でより多くの生物多様性を生み出すことになっています」と説明する。
森林伐採と気候変動はこのような生態系に対する脅威になっている。CESのウメシュ・スリニヴァサン(Umesh Srinivasan)氏は「熱帯山岳地域の鳥、植物相および動物相のほとんどは、温度に非常に敏感であり、温暖化に急速に反応しています。また、世界の陸上生物の多様性のほとんどが熱帯山岳地域に集中しています」と述べる。一方で、これらの脅威の影響を探る研究はほとんど行われていない。
研究チームは、10年以上にわたる研究データから、多くの鳥類が気温の上昇に伴い標高の高い地域に移動し始めていることを明らかにした。伐採された森林は平均気温が高くなり、この移動を加速させている。また、サイズが小さい鳥は高い気温に適応できるため、伐採された森林に定着できる一方で、大きな鳥は伐採を受けていない森林で増加傾向にある。伐採された森林では、昆虫も減少し、昆虫を捕食する鳥類の減少もしている。
「森林伐採を行うにあたって、標高の広い範囲において森林を保護すべきであり、このニッチの遷移を勘案せずに森林を伐採するとより多くの種が局所的に絶滅してしまう」とスリニヴァサン氏は指摘した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部