2024年02月
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宇宙最初の星と銀河の誕生の様子観測、「宇宙の夜明け」の謎に迫る インド

インドのラマン研究所(RRI)は1月2日、国内および月の裏側において、宇宙で最初に星が誕生した頃である「宇宙の夜明け」に関する観測を行う準備をしていると発表した。科学誌nature indiaが1月2日に報告した。研究成果は学術誌Nature astronomyなどに掲載された。

宇宙に星が誕生した後、星からの放射線が宇宙の水素ガスをイオン化したとされる。この時期は「宇宙の夜明け」と呼ばれており、ビッグバン後1~9億年と遠い時代のため、その様子を直接観測することは困難である。そのため、最初の放射源の性質や、そのプロセスに関して、ほとんど何も分かっていない。

RRIの研究者らは当時宇宙に存在したと考えられるイオン化した水素ガスの発する波長21cmの放射線を観測するという目標を立て、Shaped Antenna measurement of the background Radio Spectrum(SARAS)実験を開始した。しかし、宇宙の膨張や他の天体の影響により、シグナルの検出は非常に困難であった。

2018年、米国のアリゾナ州立大学とマサチューセッツ工科大学の天文学者らが行ったExperiment to Detect the Global EoR Signature(EDGES)では、21 cm放射線を検出したという報告がされたが、理論的な予測とは大きく異なるシグナルであったため、物理学、宇宙論、ダークマターモデルに関して、既存の理解とは全く異なる憶測を引き起こした。しかし、装置の校正エラーで偽の検出につながった可能性があることが分かり、この主張を交差検証することがSARASの優先事項となった。

2020年、インドの北部の2カ所にて望遠鏡が展開され、SARAS実験が行われた。その結果から、EDGESによる検出はエラーであった可能性が高いと結論づけられ、SARASは現行の標準的な宇宙論を再確立させた。

その後、SARAS実験は「宇宙の夜明け」の真の姿に関する観測を再始動し、インド内の電波干渉が少ない場所で観測を継続している。一方で、別のRRI実験であるProbing ReionisATion of the Universe using Signal from Hydrogen(PRATUSH)は、地上観測の課題を解消するべく月の裏側から観測を行う準備を進めている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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