マラリア対策には、土地利用の変化に伴う蚊の多様性のモニタリングを行うことが不可欠であることをインドと英国の研究者チームが明らかにした。科学誌nature indiaが1月10日に報告した。研究成果は学術誌InfectionやGenetics and Evolutionに掲載された。
マラリアは、マラリア原虫を持った蚊、ハマダラカに刺されることによって生じる感染症だ。インドのメガラヤ州では、水田の増加により、ハマダラカの2種 (Anopheles minimusとAnopheles baimaii) の個体数が減少し、他の4種が増加した。
メガラヤ州を含むインド北東部でのマラリア感染症率は、国内の10~12%を占めている。メガラヤ州シロンのインド公衆衛生研究所、マディヤ・プラデーシュ州ジャバルプールのインド医学研究評議会(ICMR)傘下の国立部族衛生研究所、英国マンチェスター大学の科学者らは、メガラヤ州の西カシ丘陵地区と西ジャインティア丘陵地区の14の村からハマダラカの成虫と幼虫を採集した。
アレル特異的PCR法やシトクロムcオキシターゼI(COI)を用いたDNAバーコーディングなどの分子学的手法を用いて19種の蚊を同定し、この地域に生息するハマダラカの高い多様性を明らかにした。また、地域によるハマダラカの種の違いや水田で見られた新たな種の幼虫は、土地被覆の変化と種組成の変化との関係が示唆された。
森林に取って代わった水田は、ハマダラカのAnopheles maculatusとAnopheles pseudowillmoriの2種の増加に関与している可能性があり、マラリアの伝播に影響を与えると考えられる。マラリア対策を効果的に行うには、「土地利用が変化した場合の蚊の種組成を継続的に監視し、蚊の生物学的特性を詳細に研究する必要があります」と研究者らは説明した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部