2024年03月
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抗生物質耐性菌の迅速検出へ、検査プラットフォームとプロトコルを開発 インド

インド理科大学院(IISc)とジャワハルラール・ネルー先端科学研究所(JNCASR)による研究チームが、病気の原因となる抗生物質耐性菌を迅速に検出するための新たな検査プラットフォームと迅速診断プロトコルを開発した。2月15日付発表。研究成果は学術誌ACS Sensorsに掲載された。

研究チームは、開発にあたってテルビウムコール酸(TbCh)を含む超分子ハイドロゲルマトリックスにビフェニル-4-カルボン酸(BCA)を組み込む手法を採った。調製されたハイドロゲルは通常、紫外線を当てると緑色の蛍光を発する。この方法では、細菌が抗生物質に耐性を持つメカニズムの1つであるβ‐ラクタマーゼという酵素を検出するものだ。β-ラクタマーゼは抗生物質の重要な構造であるβ‐ラクタム環を加水分解する。

IISc有機化学科博士課程の学生で論文の筆頭著者であるアルナブ・ダッタ(Arnab Dutta) 氏は、「抗生物質の一部であるβ-ラクタム環にBCAを結合させて酵素基質を合成しました。これにTbChハイドロゲルと混ぜると、紫外線を当てても緑色の発光は起こりません。一方で、β-ラクタマーゼ酵素の存在下では、β-ラクタム環が分解されるためゲルは緑色に発光するため、β-ラクタマーゼを持つ抗生物質耐性菌を検出します」と説明する。

研究チームは、タミル・ナードゥ州を拠点とするAdiuvo Diagnostics社と共同で、イルミネート蛍光リーダーと名付けたポータブル小型イメージング装置も設計した。この装置は、紙媒体のハイドロゲルを注入できるようにすることで、コストの大幅削減に成功した。また、装置に内蔵されたカメラと専用アプリを使って緑色蛍光強度を測定することで、細菌量を定量化も可能だ。

IIScの研究チームは、JNCASRのジャヤンタ・ハルダール(Jayanta Haldar)氏の研究グループと協力し、尿サンプルを用いて開発した方法の検証を行った。IISc有機化学科のウダイ・マイトラ(Uday Maitra)教授は、この検証結果について、「健康なボランティアのサンプルを使い、尿路感染症を模倣するため病原菌を添加しました。このテストでは、2時間以内に結果を出すことに成功しました」と述べた。研究チームは今後、病院と協力し、患者のサンプルでこの技術のテストを行うことにしている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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