2024年03月
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リチウムイオン電池の電極材料へ、2次元ボロフェンの新たな合成法を開発 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究チームが、水性溶媒を用いたホウ素の液相剥離法(化学結合を切って層状物質をナノ物質に分離するプロセス)により、リチウムイオン電池の電極材料として期待される水素化物イオンが挿入されたボロンナノシート(H-BNS)を合成することに成功した。2月20日付発表。研究成果は学術誌Chemical Communicationsに掲載された。

リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコン、その他の家電製品など、ほぼすべての電子機器に使用される。私たちの生活に大きな関わりを持ち、その製造は最良の方法と部品で行われる必要がある。

近年、2次元ボロフェン(2D-B)が電極材料として注目を集めている。2D-Bは、電気伝導体として使用される炭素材料のグラフェンに似ており、その重量はグラフェンより軽い。2D-Bは、ある化学形態で良好な電気伝導性を持つため、いくつかの電気化学的応用のための電極材料として使用できる。

ボロフェンの合成方法は多岐にわたるが、水性溶媒を用いたホウ素の液相剥離法の報告はこれまでに1件しかない。IIT-M化学科クリーンエネルギー研究室のアナンダクマル・スケリ(Anandhakumar Sukeri)教授らは、プローブソニケーターとボールミル装置を用いて、H-BNSを合成する新たな方法を開発した。

合成されたH-BNSは、大気下で非常に安定した物質で、リチウムイオン電池の負極材料として使用することに成功し、500回の放充電サイクル試験の使用後でも良好な性能と容量保持を示した。本研究は、エネルギーやセンサー、触媒用途に関連したH-BNSの適性を見出すための新たな可能性を持つ。

インドのポンディシェリ大学のペルマル・エルマライ(Perumal Elumalai)教授は「この論文は、リチウムイオン電池の負極として新しい層状材料を報告しています。この材料は、層状構造を持つ水素化物安定化ホウ素で、簡単な超音波化学的方法により、大量に合成することができます。この方法は、高温、高圧、長時間、高エネルギーを必要としていません。また、H-BNSをグラム単位の量で合成する場合においても、少ない時間とエネルギーで簡単に合成することができます。この材料は、商業的応用に対して、大きな可能性を秘めています」と研究を称賛した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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