インド工科大学マドラス校(IIT-M)の研究者らが、子供と成人の読書中の脳活動と機能をfMRIを用いて調査し、両者の読書中の脳活動に違いがあることを明らかにした。2月27日付発表。
近年、認知機能に対する新しい考え方が広まりつつある。認知は、個々の脳領域が独立し実行すると考えられてきたが、実際はいくつかの脳領域が連携して行っている可能性がある。認知と神経ネットワークの理解が深まれば、アルツハイマー病やうつ病などの病気の理解が深まり、より優れた人工知能(AI)の神経回路網を作ることにも役立つ。
IIT-M物理学科のラビーンデブ・ビシャール(Rabindev Bishal)氏とインド国立脳研究センターのサリカ・チェロダス(Sarika Cherodath)氏らが行ったこの研究では、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて、子供と成人の読書中の脳活動と機能を調べた。
研究者らは英語とヒンディー語の読書課題を実施した。読書課題には単純同一ブロックデザインを用いた。参加者は、課題ブロック中に出現した単語と非単語('cat'は単語、'cae'は非単語)を音読し、休息ブロック中は表示された記号を注視するよう求められた。各課題ブロックでは、10個の単語または非単語が2秒間表示された。また、休息ブロックごとに、1つの偽文字列がランダムに20秒間提示された。参加者は、各言語のfMRI課題を2回ずつ行い、それぞれの課題は、3単語ブロック、3非単語ブロック、6休息ブロックで構成された。読書課題の合計時間は16分であった。
fMRIデータを分析した結果、子どもでは右海馬で高いレベルの活動が認められ、成人ではネットワーク領域で高い活動が認められた。大人は子どもに比べて短期相関が優位であったことから、子どもは読書情報を処理するのに時間がかかることが分かった。
データサイエンスと科学ソフトウェアのコンサルタントであるマラヤヤ・チュタニ(Malayaja Chutani)博士は、「著者らは、時系列ネットワーク解析と単純化特徴づけの応用を、大人と子供の読書課題実行中のfMRI測定から得られた実世界のデータに拡張しました。比較を行った結果、成人の脳活動は子供の脳活動よりも低次元の単純構造を示すことが分かりました。研究を通して、脳活動の進化について明らかになるでしょう」と話した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部