インド工科大学デリー校(IIT-D)は3月6日、同校物理学部の研究者らが、モアレ材料の電子特性にフラクタル幾何学が予期せぬ形で現れることを発見したと発表した。研究成果は学術誌Physical Review Bに掲載された。
モアレパターンは2つ以上の格子を重ね合わせ、その間に相対的なねじれやずれを生じさせたときに現れる干渉パターンである。グラフェンのような2次元結晶を重ね合わせ、相対的にねじると、その特性が劇的に変化し、常温条件下で超伝導になる可能性が分かると、材料の世界はモアレパターンで魅了されるようになった。このアイデアは、ファンデルワールス構造の特別なクラスを形成する大きなクラスのねじれた層状材料に一般化され、モアレ材料として知られている。
自然界のフラクタルは、花びらや海岸線など多様な物理系に自己相似的なパターンが現れることから、その偏在性は長い間、研究者の心を奪った。IIT-Dの研究者らは、グラフェンやHBN(六方晶窒化ホウ素)などの2次元結晶を積み重ね、特定の角度だけひねると、モワレパターンが電子的フラクタルを示すことを実証した。研究者らは、この新しいクラスの電子フラクタルをモアレフラクタルと名付け、そのフラクタル次元と与えられたエネルギー窓内の電子バンドの数とを関連づける公式を導いた。
この発見は、ファンデルワールス物質の伝導特性を制御する上で重要な意味を持ち、量子材料を設計するデザイナーに強力なツールを与える。彼らはまた、モアレフラクタルと、経済地理学の中心理論で説明されるような交通や商業で生じるフラクタルとの類似性を見出し、こうしたフラクタル構造の遍在性を改めて裏付けた。
この研究を発表したサンカルパ・ゴシュ(Sankalpa Ghosh)教授とロヒト・ナルラ(Rohit Narula)教授は、「モアレフラクタルが実験的に確認されれば、将来の半導体技術実現に期待される興味深いクラスの量子材料の作成に役立つでしょう」とコメントした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部