インド工科大学マドラス校(IIT-M)は3月5日、IIT-Mの研究者らがマイクロエレクトロニクスの処理に使う還元型酸化グラフェン(rGO)膜の大面積処理を溶液ベースで行う技術を開発したと発表した。研究成果は学術誌Carbonに掲載された。
小型化が求められる電子機器において、電気的機能と機械的機能をナノメートルスケールで統合したナノ電気機械システム(NEMS)と呼ばれるデバイスが急速に普及している。NEMSでは導電における課題や材料の特性劣化といった問題に対処するためにグラフェンが多用される。グラフェンは非常に薄く、弾性変形に必要な力を示すヤング率が高いため曲げ伸ばしが容易で、質量密度が低い。また、導電性が高く、電子移動度が高い。通常、グラフェンにおける大面積加工は、化学気相成長法(CVD法)を用いるが、このプロセスは非常に高価で複雑であり、熱消費量も高いため、別の方法が求められていた。
IIT-M電気工学科のスダルサン・マジュムダー(Sudarsan Majumder)氏、ニヒル・パティル(Nikhil Patil)氏、スミヤ・ダッタ(Soumya Dutta)教授の3人は、この代替手段として、溶液を用いた酸化グラフェン(GO)の析出と、それに続くrGOへの化学変換による方法を開発した。rGO膜のパターン形成とパターン形成されたrGOの活性デバイス領域への転写は、IIT-Mの2つの重要な発明であり、インドにおいてそれぞれ特許を取得している。
一般に、グラフェンをベースにしたデバイスの作製には電子線リソグラフィ(EBL)が用いられるが、研究用としてのみ有効な方法だ。これに対し、本研究では、フォトリソグラフィーやエッチングなど、CMOS互換の拡張可能な技術を用いてデバイスを作製している。
この研究では、バッチ処理によって超高感度rGOベースNEMSデバイスを低コストで拡張可能な製造を行うことで、高効率の力センサーや質量センサーのような実用的アプリケーションへの統合を促進する。この製造プロセスは、現在のマイクロエレクトロニクス技術と互換性があり、分子センサーや質量検出器などの応用に向けたrGOベースNEMSのオンチップ実装に見通しを立てようとしている。IIT-Mの研究グループはすでに、rGO転写法を用いない第2世代のデバイスの開発を進めており、間もなく発表される予定だ。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部