インド工科大学マドラス校(IIT-M)は3月11日、宇宙での生物学的製造研究開発を目的として、インドのスタートアップ企業ヴェロン・スペース(Vellon Space)社と協力関係を結んだことを発表した。
このパートナーシップは、地球の低軌道上における微小重力環境での研究にとって画期的なものである。ヴェロン・スペース社はIIT-Mから技術開発資金を受け、アステリクス・ラボ(AsteriX Lab)という小型宇宙ラボで軌道上の実証実験を行う。宇宙また地球帰還後の使用に耐える製品の技術開発研究を行っている
IIT-Mの宇宙製造(ExTeM-IITM)研究センターが試験的な発注者となり、宇宙空間での実験は2025年までに行われる予定である。アステリクス・ラボは実証実験に際し、特に地球の低軌道上の微小重力環境での長期間細胞培養を含む生物学的実験を行うため、宇宙適格性を試されることになる。
現在の宇宙関連製造研究においては、打ち上げ機や衛星などの製造技術は開発されているものの、近い将来、宇宙また帰還後の使用を含めた製品製造や組み立てを宇宙空間で行う技術が必要となる。ExTeM-IITMのIoEリサーチセンターにはこのギャップを埋める役割が期待される。
ExTeM-IITMのコーディネーターであり、IIT-M機械工学部のサティヤン・スッビア(Sathyan Subbiah)教授は、「今回の実験が将来の宇宙空間での生物学的製造につながり、細胞培養や薬品開発の方法に画期的な変革をもたらし、ひいては医薬品の向上と人類の健康に貢献する可能性があります」と述べた。
またIIT-Mバイオテクノロジー学部のG.K.スライシュクマー(G.K. Suraishkumar)教授も、「生物系統に及ぼす微小重力の影響についてより深い理解を得ることで、薬品開発プロセスの革新や宇宙技術セクターの商業機会が創出されることに期待をしています」と述べた。
ヴェロン・スペース社のアジャイ・クマール(Ajay Kumar)創設者兼CEOは、「今回の協力における専門知識とリソースの戦略的連携により、科学の推進のみならず、宇宙空間における未来の製品製造における可能性が開かれるでしょう」と語った。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部