2024年04月
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原子レベルなどの量子領域におけるカオス理論研究 インド工科大学マドラス校

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は3月26日、物理学科の研究者らが行う量子領域におけるカオス理論についての研究内容を紹介した。

カオス理論は数学の一分野であり、ニュートンの運動法則に支配されたシステムがどのようにして予測不可能になり、一見ランダムな振る舞いを示すようになるのかという問題を扱っている。一方で、カオスは原子レベルではどのように作用するのかは理解が不十分である。それは、原子レベルの物理学は量子力学によって支配されているためである。

物理学科のヴァイバフ・マドホック(Vaibhav Madhok)教授が率いる研究チームは量子領域におけるカオス理論について研究を行っている。研究チームの問いは、「予測不可能性は有用な情報なのか」ということであった。予測不可能性と情報は対極にあるため、この問いはそれ自体相反するものと思われる。しかし、すべてが既知で予測可能であれば、新しく得る情報は無くなる。つまり、私たちが情報を得るのは、ある出来事の結果が予測不可能な場合だけである。研究チームは、予測不可能な結果から情報を得るための手法として量子トモグラフィーを用いた研究を行った。多体量子系における演算子の広がりについて研究を進め、量子カオスにおける演算子拡散について操作的解釈を与えた。この研究のプロトコルは、原子とレーザー光を用いた実験において、実験的に行うことが可能だ。

インドのプネーにあるインド科学教育研究大学のM. S・サンタナム(M. S. Santhanam)教授は、「古典的カオスでは、近接する古典的軌道の指数関数的広がりにより、短い時間地平を超える予測不可能性を説明することができます。一方、量子領域では、軌道という概念がそもそも存在しません。数学的手法を用いて演算子の広がりから予測不可能性を特徴づける方法がありますが、実験的手法の有無が重要な問題となります。マドホック氏らは、量子トモグラフィーという具体的な手法と結果を示しており、これは量子コンピューティングなどの分野で、多体系における量子カオスの効果を理解するのに役立ちます。また古典的なエントロピーの概念からカオス量子系における情報利得に至るまで、多くの異なる考え方を結びつけるものであり、興味深い貢献だと考えられます」と研究の意義を語った。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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