2024年05月
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牛ランピースキン病ウイルス、国内変異株流行状況を調査 インド

インド理科大学院(IISc)は4月2日、IISc生化学部の研究者らのチームが、2022年インドで感染爆発が起こった牛のランピースキン病の原因となるウイルス国内変異株流行状況について調査した結果について発表した。研究成果は学術誌BMC Genomicsに掲載された。

2022年5月、インド全土で牛のランピースキン病として特定されたこの病気は、インドの農業に深刻な影響を与え、多額の経済的損失をもたらした。ランピースキン病ウイルス(LSDV)による感染症であり、蚊やハエなどによって媒介され、感染すると発熱としこりを引き起こす致命的なものである。LSDVは1931年にアフリカのザンビアで初めて発見され、世界的に拡大、インドでは2019年に初症例が報告され、2022年に大流行へと至った。

IISc生化学部のウトパル・タトゥ(Utpal Tatu)教授らは、牛ランピースキン病大流行の原因解明に乗り出し、研究チームはグジャラート州、マハラシュトラ州、ラジャスタン州、カルナータカ州などの各州で獣医学研究機関と協力し、感染した牛からサンプルを採取、DNAの全ゲノム配列決定を行った。その結果、LSDVの変異株は2種類あり、1つは遺伝的変異の数が少なく、もう1つは遺伝的変異が多いことが分かった。前者は、以前に配列決定された2019年のRanchi株と2020年のHyderabad株と遺伝的に類似していた。また、後者は、2015年にロシアで発生したLSDV株に類似していた。

さらに研究チームは、変異株のDNAに、遺伝子の欠失や挿入、一塩基多型(SNP)など1,800を超える遺伝的変異を発見し、宿主細胞との結合や免疫応答の回避、効率的な複製にとって重要な役割を持つウイルス遺伝子の遺伝的変異が多数あることも分かった。

この研究は、分子生物学者、計算専門家、獣医師を含む学際的な研究チームがインドの問題に取り組むOne Healthアプローチの一例だ。タトゥ教授は「この研究はインドで大流行したLSDVの変異株流行状況を全国規模で初めて明らかにしたものであり、ゲノムデータはワクチン開発にとって非常に重要なものとなります」と研究の重要性を橋梁した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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