インド地球科学省(MoES)と英国のイースト・アングリア大学の研究チームは、新たなシミュレーション研究を通して、ヒンドゥスターン平野(IGP)における冬期作物の灌漑用水の増加が、隣接するデリーや北インドの霧の発生を増大させていることを示唆する結果を発表した。科学誌nature indiaが4月1日に伝えた。研究成果は学術誌Commun Earth Environに掲載された。
霧は複数のプロセスが相互作用し、数値天気予報(NWP)モデルでの表現が不確かなため、その予測を行うことは難しい。このシミュレーション研究から、気象予測の重要なインプットとして、灌漑を考慮する必要性が示唆された。
IGPにおける霧の発生は1960年代に複式作付が導入されたことに端を発し、冬の乾燥期に行われる灌漑に関係していると考えられる。事実、霧の発生に不可欠な土壌の水分レベルは灌漑により変化している。
この仮説を検証するため、研究チームは英国気象庁全領域統一数値予報モデルを使ってシミュレーションを行い、冬季灌漑を行った場合と行わなかった場合のシナリオを比較した。研究チームは、衛星から得られた土壌水分データを使用し、シミュレーションに必要な灌漑を考慮しデリーに焦点を当てたシミュレーションを行った。
1972~2010年までの期間、IGPの冬季の灌漑は10年ごとに毎月10ミリメートルずつ増加し、同じ期間に、冬の降水傾向に大きな変化はなかった。したがって、灌漑による地表の水の増加が霧の増加頻度と関連していることが分かった。
灌漑を考慮したシミュレーションでは、衛星や現地での観測と一致し、霧の発生が正確に再現された。シミュレーション研究を通して、灌漑地域からの水分の移動が、デリーなどの都市部を覆う霧の原因であることが明らかになった。研究者らはIGPの灌漑を考慮することで、気象予報の精度が向上したと述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部