インド工科大学マドラス校(IIT-M)は4月30日、同学とドイツの研究者らが反強磁性をもつ1/2ハイゼンベルグモデルと幾何学的フラストレーションを考慮し、磁気格子であるメープルリーフ格子(MLL)上に量子スピン液体(QSL)の存在を示唆する証拠を発見したことを伝えた。
量子コンピューティングは、その超高速な計算能力や正確さから注目を浴びており、多くの研究が行われている。量子力学では、通常の物理法則とは異なる現象が観察される。量子力学では粒子はスピンに従って整列し、電子、陽子、中性子などによって固有のスピンの性質を示すことが知られている。一方、QSLはスピンが無秩序の状態にあることが特徴であり、そのユニークさと量子技術への応用の可能性から注目を集めている。
ハイゼンベルグモデルは、磁性体中の量子スピン間の相互作用を理解するために用いられる理論モデルである。本研究では、反強磁性特性を持つ1/2ハイゼンベルグモデルを用いている。また、幾何学的フラストレーションでは、フラストレーションが幾何学的に起こり、格子構造がすべてのスピンの整列を妨げる点を考慮し、MLLを用いて研究を進めている。MLLは、2次元アルキメデス格子に属し、天然鉱物や人工結晶で実現されるという。
QSLはカンテッド120度反強磁性秩序(スピンが完全な反強磁性配列から離れて傾いている物質)と価電子結合結晶秩序(価電子結合結晶秩序は、絡み合った粒子のペアが結晶のような配列で形成される秩序)の中間領域を占めることがわかった。
MLLモデルは、QSLと脱閉じ込め量子臨界点(DQCP:異なる物質状態間の量子相転移)をホストとするフラストレーションモデルの珍しい例として機能する可能性がある。研究チームは、DQCPからQSLが発生する可能性に関して、さらなる研究が必要であると考えている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部