インドの研究者らが、古代生物やその生痕化石から、太古の生物活動や当時の気候状況を明らかにする研究を進めている。科学誌nature indiaが5月1日に伝えた。研究成果は学術誌Palaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology、Marine Micropaleontology、Coral Reefs、Journal of Geophysical Research: Biogeosciencesに掲載された。
インド西海岸のクッチ湾は砂漠、露頭、塩干潟のモザイク地帯である。近年、生痕化石である穴が発見され、研究者らが太古の気象状況を知る手がかりとなっている。
インド工科大学ボンベイ校(IIT-B)のモフリ・ダス(Mohuli Das)氏は、ナレディ盆地の生痕化石を研究している。ダス氏は、化石の大きさや数などから、生物が過去の温暖化のストレスに適応しようとしていたこと発見した。「現在の温暖化の速度は、底生生物を瀕死の状態に追い込むほど急速だった過去の温暖化の約10倍です」とダスは言う。
ケララ州の港町コーラムでは露頭に1600~2000万年前の古代の海草草原の痕跡が残っている。この時代の気温は現在より5~8℃高く、CO2濃度もわずかに高かった。インドのビーバル・サーニ古植物研究所のスマン・サルカル(Suman Sarkar)氏は軽石のような岩石の化石から、緑藻類、単細胞生物、小型海産巻貝などを発見し、この地に重要な炭素貯蔵源である草原が存在していたことを示唆している。
インド工科大学カンプール校(IIT-K)のA.A.フーシア(A. A. Fousiya)氏は、最大の二枚貝、トリダクナマキシマが貝殻に作る年輪のような成長帯から、過去の海洋環境の変化を調査している。エルニーニョが起こった2010年に貝殻の成長速度が鈍化し、環境が回復すると貝殻の成長速度も回復することがわかった。今後はサンプル数を増やし、過去の地域的な異常気象をマッピングする予定だという。
インド理科大学院ベンガルール校のサンバッダ・ミスラ(Sambuddha Misra)氏は、巨大なサンゴを用いて23年間のアラビア海のpHの再構築を行い、既存のシミュレーション結果と反して、大気中のCO2が上昇しても海洋酸性化レベルは上昇しなかったということを明らかにした。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部