インド科学教育研究大学(IISER)ボーパール校の研究者らは、ゲノム解析の手法として知られる 16S rRNAアンプリコンシーケンスとショットガンメタゲノムシーケンスを用いて、アンダマン諸島の沿岸水域に生息する微生物コミュニティの調査を行った。科学誌nature indiaが5月6日に伝えた。研究成果は学術誌Scientific Reportsに掲載された。
海洋に生息するシアノバクテリアのSynechococcusやProchlorococcusは、海洋の光合成の大きな部分を占めている。光環境の変化に対処する能力はこれらのバクテリアにとって重要となる。
研究者らは、アンダマン諸島の沿岸水域で採取した微生物サンプルを、世界40カ国の研究者からなるタラ海洋探査国際コンソーシアムが主導する遺伝子配列決定プロジェクトで収集された外洋域の微生物サンプルと比較した。
この水域に生息するSynechococcusは、外洋に生息するProchlorococcusよりも光合成色素に関連する遺伝子を多く持っていた。これは、Synechococcusが光ストレスに適応していると考えられる。またこの水域では、Synechococcus光捕集ユニットのD1タンパク質を生成するpsbA遺伝子が多く見られた。Synechococcus sp.WH7803株を用いた実験では、psbA遺伝子は、光の変化の下で高い発現があり、光ストレスに強いことが分かった。一方、Prochlorococcusは光捕集遺伝子が少なく、外洋のより安定した光条件に適応していることが示唆された。さらに、この水域には、アミノグリコシド系、ベータラクタム系、テトラサイクリン系の抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子が多数見つかった。
今回の研究を通して、研究者らは、アンダマン諸島沿岸水域から9万3172個のユニークな遺伝子を海洋微生物リファレンス遺伝子カタログに追加登録した。これらのデータは、今後、バイオテクノロジーや抗生物質耐性リスクのモニタリングに活用できる可能性があると考えられる。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部