インド理科大学院(IISc)は6月11日、傘下の持続可能技術センター(CST)の研究者らが地下水からヒ素などの重金属汚染物質を持続可能な形で除去する新しい浄化プロセスを開発したことを発表した。
報告によると、インドでは21州113地区で0.01mg/Lを超えるヒ素が検出され、23州223地区では1.5mg/Lを超えるフッ素が検出されている。これらの汚染物質は、人間や動物の健康に重大な影響を及ぼす可能性があるため、効率的な除去と安全な廃棄が必要である。
IIScCSTのヤグナセニ・ロイ(Yagnaseni Roy)助教授のチームが開発したプロセスは三段階に分かれる。第1段階目は生分解性吸着剤に汚染水を通すプロセスだ。この吸着剤は甲殻類由来の繊維状物質であるキトサンに水酸化物/オキシ水酸化物の二元金属(FeとAl)を添加したもので、静電気力によりヒ素と吸着剤間に複合体形成が起こり、有毒な無機ヒ素が捕捉される。
第2段階目では、水酸化ナトリウムとヒ素を膜システムで分離するプロセスだ。ここで分離された水酸化ナトリウム水溶液は第1段階目のプロセスで吸着剤を再生するために再利用される。一方、濃縮されたヒ素は、第3段階目であるバイオレメディエーションプロセスに移行する。
このプロセスで無機ヒ素は、牛糞に含まれる微生物によってメチル化され、毒性の低い有機ヒ素に変換される。無機ヒ素は8日以内にWHO基準で定められた最大許容限度値以下にまで減少するため、牛糞汚泥は埋立地で安全に処分することができるという。「これらの有機物は、地下水に含まれる無機物の約50倍も毒性が低いのです」とロイ助教授は述べた。
このシステムの最後のステップを沈殿に変えることで、水への溶解度が非常に低いフッ化カルシウムの形でフッ素を除去することも可能だ。ロイ助教授らは現在、同じシステムを他の重金属に適応できるか調査を進めている。
システムの組み立てと操作は簡単であり、研究室では、パイロットスケールの小さな吸着カラムシステムで、2人分の安全な飲料水(WHO基準)を3日間生成することができたという。研究者たちは、国内の農村部で、これらのシステムを展開しテストするために、複数のNGOらと協力している。将来的にはコミュニティレベルでのシステム運用を視野に検討が進められている。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部