インドの研究者が参加する国際研究チームは、宇宙旅行が加齢と同様、筋肉の減少や筋力低下に関する遺伝子や経路に影響を与えることを明らかにした。科学誌nature indiaが7月2日に伝えた。研究成果は科学誌Scientific Reportsに掲載された。
宇宙旅行や有人宇宙ミッションの増加に伴い、宇宙空間での健康の影響を理解することが重要になっている。インドのニューデリーにあるラム・マノハール・ロヒア病院のサスワティ・ダス(Saswati Das)氏が参加する研究チームは、米航空宇宙局(NASA)のオープンサイエンスデータや日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士データ、商業ミッションデータを利用して解析を行った。
研究チームは、虚弱や老衰に関連したフレイルバイオマーカーを用いて、遺伝子発現の変化と代謝経路への影響を調べ、筋肉の衰えや虚弱に関連するAKT1のような遺伝子が、宇宙飛行中に有意な変化を示し、肥満や糖尿病、虚弱のような状態につながる代謝経路に影響を与えていることを示した。ダス氏はこれらの原因ついて、「宇宙空間での微小重力と放射線は、炎症や筋肉の衰弱など、虚弱に似た状態を引き起こす可能性があります」と述べた。
今回の研究で注目される点は、いくつかの遺伝子発現レベルが地球に帰還した後も元に戻らず、生理学的変化が持続されることである。これは、宇宙飛行士に特異的な突然変異が見られるという最近の知見と一致しており、長期的なモニタリングの必要性がある。
またこの研究は、宇宙飛行が免疫システム障害である炎症性老化や免疫反応に関連するインターフェロン経路の活性化を引き起こすことを明らかにした。これらのパラメータとなる酸化ストレスやDNA損傷、ミトコンドリア調節異常、虚弱性バイオマーカーは、宇宙飛行士の宇宙旅行前、旅行中、旅行後の健康を監視するための虚弱指標の作成に役立つ可能性がある。
インド理科大学院の長寿インド・イニシアチブのディーパック・サイニ(Deepak Saini)氏は、宇宙における生物学的変化を理解するための加齢研究の意義を述べるとともに、「宇宙旅行者の悪条件に対する反応を研究することは、宇宙旅行に適した人を特定することに役立ちます」と分かりやすい表現で研究の重要性を強調した。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部