インドの独立調査機関サステナブル・フューチャーズ・コラボレーションの研究者らが、現状のインドにおける大気汚染の環境基準値が高く、大気汚染に起因した死亡者につながっていることを指摘し、環境基準値を見直すよう求めた。科学誌nature indiaが7月30日に伝えた。研究成果は科学誌Lancet Planet. Healthに掲載された。
インドの10都市では、毎年3万3000人もの人々が、一般的な環境基準では安全とされる空気を吸って死亡している。国連機関の大気環境基準値は1m3あたり5µg以上のPM2.5を過剰とみなしているが、インドの大気環境基準は年間平均濃度を1m3あたり40µgまで許容している。
サステナブル・フューチャーズ・コラボレーションのバルガヴ・クリシュナ(Bhargav Krishna)氏は、「現在の基準は2009年に設定されたものだが、それらを基準とした根拠の多くは公表されていない。ただ私たちが調査したほとんどの都市は、この基準に適合しています」と述べた。
大気汚染に起因した死亡者の大部分は、低~中程度の曝露レベルに集中しているため、公衆衛生向上のためには基準を厳しくする必要がある、とクリシュナ氏は考える。この研究では、2008~2019年までのインドの都市におけるPM2.5のデータと毎日の死亡者数の調査が行われた。
著者らは、当局がデリーと隣接地域に適用している段階的大気汚染対策(GRAP)を再検討することを提案している。GRAPが通常適用されない低~中程度の大気汚染地域でさえ有害である可能性があるため、通年で対策を行うことが重要であると考える。
大気質生活指数(AOLI)2021のデータによると、インドの有害粒子の基準をWHOの基準に合うように下げれば、インドの平均寿命は5年延びると考えられている。しかし、そうした変更の可能性はかなり難しいかもしれないと、デリーにあるシカゴ大学エネルギー政策研究所の大気質生活指数ディレクターのタヌシュリー・ガングリー(Tanushree Ganguly)氏は考える。タヌシュリー氏は、「定期的に大気汚染の環境基準をチェックし、健康に与える新たな証拠を示せない限り、その実現はないと思われます」と述べた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部