インド科学技術省は8月14日、食品産業で界面活性剤の代替物として利用できるより健康的で費用対効果の高い微生物が生産する界面活性剤であるバイオサーファクタントが農産業廃棄物から製造できることを発表した。研究成果は、学術誌Food Controlに掲載された。
界面活性剤は、油と水、水と油、空気と水などの表面を滑り、エマルジョンを形成する分子で、食品産業において、生地の中の油脂を乳化し、保存性を高め、分散剤として、また水分を保持するための潤滑剤や発泡剤として非常に有用だ。一方で、合成食品添加物や乳化剤の食品への使用が加速しているため、体内に生息する微生物叢のバランスが崩れ、有益な微生物の減少が危惧されている。そのため、別の選択肢が不可欠となっている。
バイオサーファクタントは、高い乳化や可溶化、発泡、吸着、その他物理的特性を示す。広範囲にわたるpH、温度、塩分濃度における安定性を持つため、食品用途に適している。バイオサーファクタントは、環境に優しい生体分子であり、毒性はない。したがって、人間が消費しても安全であると考えられる。
グワハティにある先端科学技術研究所(IASST)のアシス・K・ムカルジー(Ashis K Mukherjee)所長、M. R・カーン(M. R. Khan)教授、アヌシュリー・ロイ(Anushree Roy)氏の研究グループは、食品産業におけるバイオサーファクタントの利用を批判的に解析し、バイオサーファクタントの大規模商業化における課題を明確にした。
その結果、食品産業では、ベーカリーやサラダドレッシングの他に、バイオサーファクタントは野菜から重金属を除去し、魚の免疫力を高め、病原体に対する保護効果を与える。また、早期の腐敗を防ぐ天然の抗酸化剤として食品に使用できることが示唆された。
研究では、遺伝子工学や組換えDNA技術、ナノテクノロジーを活用して、収量を向上させ、費用対効果の高いバイオサーファクタントを生産するため、農業廃棄物の利用を検討した。また、食品配合の認可を得るための毒性学的研究、用量評価、バイオサーファクタントと他の食品成分との相乗効果についても方向性を示した。
研究者らは今後、バイオサーファクタントの生産量を最大化し市場を拡大するため、産業界と連携して、安全性評価やコスト、最先端技術に取り組む必要がある。
(出典:PIB)
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部