2024年09月
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インドの新たな「グリーン・クレジット・プログラム」を分析 米シンクタンク

米国シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」は8月14日、インドの環境・森林・気候変動省(MOEFCC)が気候変動対策として最近立ち上げたグリーン・クレジット・プログラム(Green Credit Program:GCP)の概要を紹介し、その課題を指摘する論文を公開した。

世界第3位の温室効果ガス排出国であるインドは、2070年までのネットゼロ排出達成という目標を掲げ、気候変動に配慮したさまざまな政策を導入している。2023年に策定・発表されたGCPもその一つで、インド外務省はこのプログラムを、炭素の削減・除去を追跡する従来のカーボンオフセット市場とは対照的に、「自発的な地球に優しい行動を奨励するメカニズム」と定義している。

GCPでは、グリーンクレジットを創出する環境保護活動に、植林や水の保全・処理、持続可能な農業と土地の回復といった、地域社会を対象にした環境プロジェクトが加えられる予定である。こうした環境保護活動を、GCPが設立した新たな金融市場に登録することで、所定の金銭的報酬を提供する取引可能なグリーンクレジットを獲得できる。その目標は、よりグリーンなインドへの移行を促進することに加え、従来の自主的炭素市場(voluntary carbon market:VCM)に付随するいくつかの問題を回避することにある。

しかし、GCPはまだ方法論が確立されておらず、実質的な削減効果のないクレジットなど、VCMに関して指摘されている問題点がさらに顕著になる可能性が高い。また、GCPクレジットの標準測定単位がないことも懸念される。炭素クレジット市場では、炭素の削減、回避、除去のみが考慮されるが、GCPでは炭素以外も扱うため、測定が複雑になる。さらに、インドで2025年~2026年に導入が予定されている炭素クレジット取引制度(CCTS)との間でクレジットの二重請求が生じかねないという問題もある。

こうした問題を踏まえ、同論文はCCTSとGCPを分離することの重要性を強調し、GCPがCCTSの下で二重請求されないような変更を検討すべきと提言している。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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