2024年09月
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古代、月にはマグマの海があった インド

インドのチャンドラヤーン3号(Chandrayaan-3)ミッションにより探査機プラギャン(Pragyan Rover)が行なった調査で、これまで詳細に探査されていなかった月の南極付近にかつてマグマオーシャンが存在していた証拠が発見された。科学誌nature indiaが8月21日に伝えた。

探査機プラギャンは9日間のミッションで103mを移動し、23カ所で調査を行った。アルファ粒子X線分光計を用いて、月の最外層土壌(regolith)を分析した。この分析結果は、アーメダバード物理研究所のサントシュ・ヴァダワレ(Santosh Vadawale)氏と彼のチームによって解析され、着陸地点周辺の最外層土壌が主に鉄に富む斜長岩(ferroan anorthosite)で構成されていることが明らかになった。

ヴァダワレ氏は、この結果が月のマグマオーシャン仮説を強化するものであると述べている。この仮説によれば、月のマントルは、重い物質が内側に沈み込み、軽い岩が表面に浮かび上がって外殻を形成したとされている。興味深いことに、南極付近の最外層土壌の化学的構成は、赤道および中緯度地域の土壌サンプルと非常に似ており、この仮説をさらに支持している。

探査機プラギャンはまた、この地域の地質学に関する新しい洞察も提供した。着陸地点から50m以内の地形は比較的滑らかで、目立ったクレーターや岩塊はなかった。しかし、このゾーンを超えると、近くのクレーターから放出されたと考えられる岩塊に遭遇し、小さなクレーターの縁に近い場所に形成物を観察できたという。

ヴァダワレ氏によると、この地点で得られた月面の元素組成の理解は、将来のリモートセンシングミッションや次の月面着陸計画にとって重要な「真実(groundtruth)」を提供するものだとしている。この発見は、月の地質史に対する理解を深めるだけでなく、月面のさらなる詳細な探査に向けた基礎を築くものとなる。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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