2024年09月
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マランゴニ効果における混和性で揮発性の膜の挙動を解明 インド

インド工科大学マドラス校(IIT-M)は8月27日、同大研究者が、マランゴニ効果と呼ばれる現象により、水面に拡がる混和性(混ざり合う液体)で揮発性(蒸発する液体)の膜の挙動を説明するため、スケーリング解析を行ったと発表した。研究成果は科学誌Soft Matterに掲載された。

エタノールの水滴を水面にそっと置くと、水滴から薄い膜が拡がり、軽い水滴が中心に浮かぶ。この膜の縁は不安定なため、膜の周辺にはプルームと呼ばれる花びらのような構造を等間隔に形成する。これはマランゴニ効果によるもので、2つの液体の表面張力の違いにより、表面張力の低い液体が表面張力の高い液体の上に拡がる。

このプルームが現れると、直後に膜は拡がりを止めて引っ込み、中央の水滴は0.6秒以内に水と混ざり合う。マランゴニ効果は、人体の粘液層における薬剤の拡散の模倣や海洋における流出油の制御、コーティングプロセス、インクジェット印刷など、多くの分野で応用されている。

これまでに、マランゴニ効果が関与する不混和性(混ざり合わない液体)で不揮発性(蒸発しない液体)の膜の挙動はよく理解されている。例えば、水上の油膜、溶剤や界面活性剤(異なる物質間の表面張力を低下させる化合物)の使用がある。

一方、トルエンやキシレンのような混和性で揮発性の膜の拡がりは、不混和性で不揮発性の膜の拡がりとは異なる規則に従う。この違いを説明しようといくつかの理論が試みられてきたが、これまで混和性で揮発性の膜の挙動を予測するモデルはなかった。

今回発表された研究は、この混和性で揮発性の膜の挙動を説明するため、スケーリング解析を行い著者らのモデルが実験測定値と一致することを報告した。

インド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)化学工学科のキルティ・サフ(Kirti Sahu)教授は、「この基礎実験的研究は、プールの水面で高速に拡がるエタノール膜の外側にある先端半径が、その半径と速度に対して複雑でユニークなスケーリング挙動を示すことを明らかにしました。これらの知見は、マランゴニ効果による流れによって発生する混和性で揮発性の膜拡散に関する洞察と新たなダイナミクスを提供します。この研究は、これまで説明されていなかった膜の外側の拡散半径と速度の挙動を解明するものです」と、この研究の意義と重要性を説明した。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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